サンゴを育てるLED照明、京セラが紫色LEDと独自の蛍光体調合技術で商品化:光技術(2/2 ページ)
京セラは2018年7月26日、新たに独自の紫色励起のLED照明技術「CERAPHIC(セラフィック)」のブランド強化を推進する他、同照明の特徴を生かし、2018年8月中旬からホビー向けアクアリウムLED照明市場に参入することを発表した。
2021年度にアクアリウム照明で10億円を目指
京セラのLED照明事業では、従来はビル壁面や文化財、医療向け、自動車のボディー検査などの特殊用途での展開を進めていたが、今回はこの「CERAPHIC」の技術力を生かして新たにホビー向けアクアリウム市場に参入することを決めた。
京セラ 半導体部品セラミック材料事業本部長 奥ノ薗隆志氏は「京セラでは『光が社会を豊かにする』をコンセプトにLED照明の研究開発を行っている。そのコンセプトのもと太陽光のスペクトルに近い光などを創出できる『CERAPHIC』の開発に成功した。紫励起の照明技術と蛍光体技術、蛍光体調合技術を組み合わせることで、1チップでも好みのスペクトルで優しい光を作り出すことができるようになった。アクアリウム用途で強さを発揮できると考えている」と技術の価値について強調する。
アクアリウム用途で参入した理由については「きっかけはサンゴを救いたいということだった。温暖化などでサンゴが減少する中で人工育成などに注目が集まっている。その中で重要になるのが照明である。アクアリウム用途でも照明のLED化が進んでいるが、サンゴが好む光ではなかった。そこで『CERAPHIC』により開発を行うことを決めた」と京セラ 半導体部品セラミック材料事業本部 メタライズ事業部 横井清孝氏は述べている。
アクアリウム照明市場への参入に合わせて、「CERAPHIC」の新たなブランドロゴも作成。ロゴの8つの円は、「CERAPHIC」が実現する7つの光の波長と白色の光を併せた8つの光を表しており、また配置は「CERAPHIC」の頭文字の「C」を示しているという。
製品は、水深2.5mのスペクトルを再現した光を発する「Marine Blue」、水深11mのスペクトルを再現した光を発する「Aqua Blue」、観賞用の深い青色の光を発する「Deep Blue」、地上の太陽光のスペクトルを再現した光を発する「Natural White」の4機種を発売する。価格はオープン価格だが、想定価格は10万円前後としている。
奥ノ薗氏は「ホビー向けアクリアリウム照明市場で2021年度までに10億円の売上高を達成したい。また用途も拡大する。既に動物園や水族館向けでの研究開発は進めており2018年柱に製品投入を行う。その他の用途も開拓を進め、2023年度ではLED照明事業を2017年度の10倍以上となる100億円に引き上げたい」と述べている。
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