パナソニックを100年支え続けた事業とは? その強さの秘訣を探る(前編):メイドインジャパンの現場力(17)(2/2 ページ)
世界中の多くの製造業が祖業を手放す中、パナソニックはいまだに配線器具市場では国内はもちろん、グローバルでも大きなシェアを確保している。その強さの秘訣とは何だろうか。本稿では前編でパナソニックの配線器具事業の概要について、後編で配線器具事業のマザー工場である津工場の現場力について紹介する。
安全とともに訴えた施工性の良さ
パナソニックの配線器具がこれほどまでに長く受け入れられてきた理由として、安全性やデザイン性などはもちろんだが、施工性の良さを追求してきたことが挙げられる。
1960年代の埋め込み化が進んだ時期には、施工業者への負担が増すためにこれらを軽減し「施工可能件数を増やすためにどうすればよいか」を考え、従来の巻締め端子に対してより容易に結線できる引き締め端子(EG端子)を開発。施工品質のバラつきを抑え、工事の省力化に貢献してきた。
1970年代〜1990年代には配線器具のフルカラー化などが進んだが、電線を差し込むだけで結線できる速結端子(フル端子)などを開発。さらなる施工品質の向上と省施工化を実現している。
足立氏は「配線器具は基本的には工事を伴う製品であり、エンドユーザーに対する価値とともに、工事事業者の作業負荷をいかに軽減するのかという観点が重要になる。創業時からパナソニックでは安全や安心などの価値に加えて施工性を重視してきたことが長く評価を受けている要因だと考えている。施工性向上を目指して、さまざまな独自機構の開発なども進めてきた」と述べている。
今後のポイントは機能強化と海外展開
これらの実績を生かしつつ、今後パナソニックが強化するのが、配線器具の機能強化と海外展開の強化である。パナソニックの配線器具は2000年代以降デザイン性の強化を進めワイド化やフラット化などを進めてきたが、これら「モノとして価値だけではなくさまざまな連携による機能性強化を推進する」(足立氏)。
具体的にはパナソニックの家電製品やエネルギー関連製品と連携したエネルギーマネジメントシステムとしての提案を強化する。さらに、スマートスピーカーとの連携なども推進。「配線器具からホームシステムをトータルソリューションとして展開できる形に進化させていく」と今後の展開について足立氏は述べている。
これらの商品戦略とともに、強化するのが海外戦略である。パナソニックの配線器具は既に1980年代から輸出を中心に海外展開を開始。1990年代からは海外に販売会社や生産拠点の設立を開始し、2000年代以降は新興国を中心にM&Aなどを含めて拡大を推進してきた。国内では圧倒的なシェアを握る状況だが、現状の世界シェアは「10%程度で2位という状況」(足立氏)としているが、今後は「2020年までには世界シェア1位を目指す」としている。具体的にはアフリカや中近東エリアなどでさらなる拡大を図っていくという方針を示している。
前編では、パナソニックの配線器具事業の歴史と概要について紹介したが、後編ではこれらを支えるマザー工場である津工場の現場力について紹介する。
(後編に続く)
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