“第7の感覚器官”を作り出す村田製作所、IoT時代の空間情報プロバイダーへ:製造業がサービス業となる日(2/2 ページ)
デバイスメーカーにとって曲がり角ともいえるIoT時代を迎えて、新たな取り組みを始めているのが電子部品大手の村田製作所だ。同社は2017年10月の「CEATEC JAPAN 2017」において、仮想センサープラットフォーム「NAONA」を発表。このNAONAは、IoT時代の“第7の感覚器官”になるという。
「センシングインフォメーションプロバイダー」へのデジタル変革
村田製作所においてNAONAの端緒となったのが、2016〜2018年度の中期計画「中期構想2018」の策定していた2015年である。「IoT時代に向けた挑戦を検討する中で、それを『誰に』『どうやって』ということを考えた。一言でIoT機器向けデバイスといっても、そのニーズは分散化してしまう。スマートフォンや車載機器などと比べて顧客当たりの出荷数は大幅に減少するだろう。さらに、デバイスの付加価値が下がる可能性もある」(山縣氏)。そこで、従来の部品売り切り型のビジネスモデルとは異なる新しい展開の模索が始まった。
とはいえ、村田製作所の現時点での価値ある資産はやはりデバイスである。このデバイスの中でも、IoTで重要な役割を果たすセンサーを統合し、賢く成長させていく。そして、賢く成長したセンサーによるデータを外販していくというビジネスモデル変革へと行き着いた。センサーの製造販売から「センシングインフォメーションプロバイダー」になるという、デジタルトランスフォーメンションである。さらに、センサーで得られる物理情報に解釈を加えることで生まれる「認知情報」を外販するデータとして位置付け、これがNAONAの基本コンセプトとなった。
2016年春には、NAONAの基本コンセプトのPoC(概念実証)を使って経営陣に説明。同年8月には、技術担当の取締役である岩坪浩氏を総責任者として、技術・事業開発本部内にIoTプロジェクト推進室が発足した。NAONAで当初目指していたコミュニケーションの可視化が求められる顧客の需要を確認するために、最小構成単位のシステムを、イベント会場や各種式場、飲食店などさまざまな現場に持ち込みその効果を確認した。山縣氏は「もちろん当たり外れもあるが、サービス業の現場における改善や効率化に役立つことを確認できた。その一方で、顧客のITリテラシーが課題になることも見えてきた。ITリテラシーの観点ではより課題が少ないオフィス向けの展開も想定するようになった」と述べる。
これらの活動の結果、2017年春には事業化が決定。そしてCEATEC JAPAN 2017でお披露目を行うことも決まった。CEATEC JAPAN 2017ではさまざまな顧客との接点が生まれるなど、NAONAの事業化に向けた大きな起点となった。2018年2月には、Phone Appliとの協力による音声特徴量を基にした会議の質の見える化、親和保育園との協力による監視カメラなどを用いない子どもの見守り、といった実証実験を行うなどしている。
2018年5月の「第7回 IoT/M2M展 春」では、NAONA向けのハードウェアソリューションを披露。「最初はどうしてもあり合わせでモックアップに近いものだったが、ハードウェアもしっかり準備できつつある」(山縣氏)。また、IoTプラットフォームとして求められるオープン性の観点でも、つながるセンサーとして村田製作所製にこだわらない姿勢をみせる。「他社のセンサーでも全く問題なくつながるようにする。もし、当社が手掛けていないセンサーで需要が極めて高いのであれば、そのときに作ればいい」(同氏)としている。
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