新生CEATEC、電子部品メーカーはCPS/IoTにどうアプローチしたのか:CEATEC 2017(1/3 ページ)
「モノ」売りから「コト」売りへの移行が重視されるCPS/IoTの展示会に生まれ変わった「CEATEC JAPAN」。「エレクトロニクスショー」時代から出展を続けてきた電子部品メーカーの展示も、もはや「スゴい部品」を見せるだけでは済まされない。CPS/IoTに対して、どのようにアプローチしているのだろうか。
「CEATEC JAPAN」は2016年から、CPS(サイバーフィジカルシステム)/IoT(モノのインターネット)をテーマとするB2Bの展示会として生まれ変わった。ただし、それ以前のCEATEC JAPANがB2Bの展示会でなかったかと言えば、そうではない。CEATEC JAPANとなる以前、「エレクトロニクスショー」の時代から最も展示社数が多いのは、B2Bを重視してきた電子部品メーカー中心の展示エリアだ。
CPS/IoTの展示会となった「CEATEC JAPAN」の「デバイス・ソフトウェアエリア」には、今も変わらず国内大手をはじめ電子部品メーカーが多数出展している。しかし「モノ」売りから「コト」売りへの移行が重視されるCPS/IoTの世界で、電子部品メーカーもただ「スゴい部品」を見せればいいというわけにはいかなくなっている。CPS/IoTにどのようにアプローチできるのかを見せる必要があるのだ。
空間情報を可視化する「NAONA」
電子部品メーカーによるCPS/IoTに関する展示の中で最も斬新だったのが村田製作所の仮想センサープラットフォーム「NAONA」だろう。NAONAは「センサーから収集したデータを、無線などの通信技術でクラウドに送って分析し、可視化する」という意味では、既に数多く発表されているIoTプラットフォームとさほど変わらない。
NAONAが他のIoTプラットフォームと異なるのは、さまざまなセンサーの組み合わせによって構築される仮想センサーのデータを用いて、場の雰囲気や盛り上がりや人間同士の親密度など、これまでデジタル化できていなかった情報を空間情報として可視化するところにある。「空間上にマッピングされたさまざまなセンサーの複合的な組み合わせが仮想センサーになる。この仮想センサーのデータから空間情報を可視化するアルゴリズムは、ウフルと共同開発した。IoTプラットフォームとしては、AWS上でマルチテナントで展開し、さまざまな顧客に使ってもらえるようにする」(村田製作所の説明員)。
NAONAにつなげるセンサーは「当社で全てのセンサーを網羅できているわけではない」(同説明員)ので、村田製作所の製品である必要はない。それよりも、センサーの配置の仕方や同社が得意とする無線通信モジュールが仮想センサー構築のノウハウになる。
展示では、展示スペース内に設置した20個の音センサー(マイク)のデータを使って、空間の「盛り上がり」や「落ち着き」といった情報を「雰囲気センサー」として可視化して見せた。「通常、展示会場内の状態の見える化では人のいる、いないに注目するが、今回はコミュケーションの盛り上がりが分かるようになっている」(同説明員)という。
「センサーネットワークモジュール」以外にも展開を拡大
アルプス電気は、IoTにいち早く取り組んできた電子部品メーカーだ。同社が販売している「センサーネットワークモジュール」は、多くのセンサーを集積するとともに小型で、ボタン電池で長期間動作することもあり、さまざまなIoTシステムの開発プロジェクトに利用されている(関連記事:アルプス電気はIoTで新規顧客と向き合うため“全てを捨てた”)。
このセンサーネットワークモジュールでは、焦電センサーや風量センサーなどさらにセンサーを追加できる機能拡張タイプも開発中だ。
この他、他社との協業によるスマートファクトリーへの取り組みについても展示した。コンテックとの協業事例は、先述したセンサーネットワークモジュールとコンテックのM2Mコントローラーを組み合わせてIoT化を容易に実現させるというもの。
もう1つは、アルプス電気が出資するデバイス&システム・プラットフォーム開発センター(DSPC)との事例だ。モーターやアクチュエーターなどの産業機器の回転機構の故障予知を行うものだが、ここでアルプス電気が提供しているのは無線モジュールであって、故障予知に必要な振動センサーはアルプス電気製ではない。「DSPCとの協業事例に最適な振動センサーは、現時点において当社のポートフォリオにはない。重要なのは、顧客の課題をどのようにすれば解決できるかであって、自社製センサーにこだわっているわけではない」(アルプス電気の説明員)という。
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