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アルプス電気はIoTで新規顧客と向き合うため“全てを捨てた”製造業IoT(1/3 ページ)

アルプス電気の「センサーネットワークモジュール」は、4種類のセンサーを搭載しBluetoothでの通信に対応した新製品だ。センサーと通信モジュールという既存事業の組み合わせから、新規事業を立ち上げることを狙った。展示会で披露すると300件を超える引き合いがあったが、即座にビジネスに直結とは行かなかった。そこから引き合いをモノにするまでにはどのような苦労があったのか。

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アルプス電気の稲垣一哉氏
アルプス電気の稲垣一哉氏

 展示会で披露した試作品に、通常の6倍を超える引き合いが――。アルプス電気の「センサーネットワークモジュール」は、4種類のセンサーを搭載しBluetoothでの通信に対応した新製品だ。センサーと通信モジュールという既存事業の組み合わせから、新規事業を立ち上げることを狙った。展示会で披露すると300件を超える引き合いがあったが、ビジネスに直結とは行かなかった。

 異例の引き合いをなぜすぐに事業化できなかったのか、ビジネスとして成立させるために考え方をどう変えたのか。日本能率協会が開催した「第20回 開発・技術マネジメント革新大会」(2016年6月9日開催)で、アルプス電気 営業本部 民生・新市場業務部でIoTを担当する稲垣一哉氏が取り組みを語った。

ヒットの予感

 センサーネットワークモジュールは、センサーと通信モジュールという同社の強みを組み合わせて新しい価値を創造することを目指す中で生まれた。これまでにも電流センサーモジュールや環境センサーモジュール、モーションセンサーモジュールなどを開発しており、これらを一体化できないかと何度目かの挑戦で完成した。

新規事業の一環で、さまざまなセンサーノードを試作してきた
新規事業の一環で、さまざまなセンサーノードを試作してきた (クリックして拡大) 出典:アルプス電気

 センサーネットワークモジュールが搭載しているのは、気圧/温湿度/照度/加速度のセンサーだ。Bluetooth Smartにも対応し、Android端末からセンサーの設定や測定結果を確認できるようにしている。外形寸法は27×44×11mm。ジャイロセンサーやCO2センサーなども搭載を検討したが、小型化と低コスト化を優先して採用しなかった。現在は同社のWebサイトから販売している。

センサーネットワークモジュールの仕様
センサーネットワークモジュールの仕様 (クリックして拡大) 出典:アルプス電気

 これは試行錯誤の末に確定した仕様だ。その経緯は後述する。

 センサーネットワークモジュールは、2015年10月開催の「CEATEC JAPAN 2015」ではグリーン・イノベーション部門の準グランプリを受賞して高い評価を受け、300件超の引き合いもあったという。通常の1つの製品に対する引き合いは50件程度なので、同社としては異例のヒット商品になるはずだった。

引き合いがビジネスにつながらない

 実際に商談に行くと、これまでの同社のビジネスとは勝手が違った。

 これまでは車載用途やスマートフォン向けなど、1個100円の部品を月に100万個生産して1億円を売り上げるような大量生産でビジネスモデルを作ってきた。しかし、センサーネットワークモジュールの引き合いでは生産規模が小さく、要求される仕様は案件ごとにバラバラだった。

 同社は、これまでのセットメーカーとの取引では「ここに使うから、こんな仕様の製品がほしい」と受注するビジネスだった。しかし、センサーネットワークモジュールは、製品の使い方のイメージは明確なのに、仕様となるソフトウェアやハードウェアの構成がはっきりしない顧客が少なくなかった。「展示会に出したものをそのまま売ってくれ」「ありものでいいから筐体に収まったものがほしい」といった、これまでにない依頼も目立った。求められる価格も、同社の感覚よりはかなり安価だった。

 大量生産をビジネスモデルとする同社としてはこうした要望に個別にきめ細かく対応するのは難しかったが、多くの引き合いを放っておくわけにもいかなかった。なぜ引き合いをビジネスにつなげられないのか、社内で検討を開始した。

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