人の苦しみを肩代わりするサービスロボット、原発を廃炉に導き起立障害を解決へ:サービスロボット(2/2 ページ)
世界最大級の技術専門家の組織IEEEは2018年6月20日、都内で「サービスロボット技術の現状と未来」と題したプレスセミナーを開催した。
廃炉のためのロボット技術
続いて「福島第一原子力発電所の事故対応・廃止措置および災害対策におけるロボット技術の活用と今後の課題」について紹介。2011年3月に発生した東日本大震災の影響により福島第一原子力発電所の事故が起こった。被災により、燃料タンクおよび発電機が全交流電源を喪失。原子炉および燃料貯蔵プールの冷却異常、冷却水の減少、メルトダウン、水素爆発などを起こし、莫大な放射性物質をまき散らす事態に陥った。淺間氏は事故直後から、政府のプロジェクトチームの一員となり、ロボットの現場活用に関するアドバイスを行っていたという。
経済産業省と東京電力による事故対応の中長期ロードマップによると、1〜3期まで設定されている中で、現在は第2期(2021年まで)にある。具体的には燃料デブリの取り出し準備を進めている段階だという。燃料デブリの取り出しを完了し、廃止措置が完了するには30〜40年かかると見込まれている。
この事故対応や廃止措置においては、冷却系の安定化や封じ込め、廃炉、現場作業員の被ばくの低減がミッションとなっている。ただ、高い放射線量であるため人間の活動が制限される。そのため、作業をロボットで置き換えることが求められている。ロボットのタスクとしては、がれき除去、サーベイマップの自動作成(放射線測定)、建屋(原子炉建屋、タービン建屋)内調査(映像、放射線量、温度、酸素濃度など)、サンプル調査、除染、遮蔽など多岐にわたっている。
ここでは、外国製のコンクリートポンプ車などの建機や国産の建機、内部調査装置、小型走行車、水中遠泳ロボットなどのロボット技術が導入された。「今後も燃料デブリの取り出しや止水、調査などを行うため、遠隔操作のロボット技術は廃止措置が終わるまでニーズは存在する」と淺間氏は予測する。
これらのロボット技術の開発は2011年からNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)で、実際に福島原発で使うことを想定し、ロボットメーカー数社を中心に進められた。ここで開発された水陸両用のロボット(実際に現場で使われることはなかった)の特徴は、複数の魚眼カメラを搭載し、この画像を処理して、遠隔から俯瞰画像を作るというものだ。その映像はあたかも上から見ているようなもので、その映像をモニターに映し出し、それに基づいて遠隔操作するという技術を用いている。現在では、この技術を建機にも搭載、災害時に遠隔から操作し工事を行うことにも使われているという。さらにこの技術を発展させ、上からだけでなく、さまざまな角度から(任意の視点)見ることができる、俯瞰画像生成技術を開発。会場でのデモンストレーションなども行った。
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