金属3Dプリンタの変形量をあらかじめ考慮、高い材料費を無駄にしない:CAEニュース
アンシス・ジャパンはパウダーベッド方式金属3Dプリンタ用シミュレーションツール「ANSYS Additive Print」および「ANSYS Additive Suite」の機能や、新機能「Additive Science」のリリース予定について明かした。
アンシス・ジャパンはパウダーベッド方式金属3Dプリンタ用シミュレーションツール「ANSYS Additive Print」および「ANSYS Additive Suite」の機能や、新機能「Additive Science」のリリース予定について明かした。両ツールはCAEファミリーの最新バージョン「ANSYS 19.1」に含まれる(関連記事:金属3Dプリンタの変形量をあらかじめ考慮、高い材料費を無駄にしない)。
金属3Dプリンタによる製造においては、レーザーなどで金属材料に熱を加えて溶解させ、さらにそれを凝固もしくは焼結させて、少しずつ積層していくため造形過程で熱ひずみによって造形物に変形が生じる。また金属積層は、樹脂積層よりも変形が顕著である。両ツールでは金属積層プロセス独特の条件を考慮しながら、サポートの形状も含めて、変形量や応力などの計算が可能だ。また解析により割り出した変形量を見込んで、あらかじめ変形させた形状が自動算出できる。
「ANSYS Additive Print」は機械設計者を含む幅広い技術者向けのシステムであり、1つの画面の中でシンプルな操作で迅速な解析ができるよう工夫している。他のANSYSシミュレーション製品ライセンスは必要なく、単独で利用できる。この製品はANSYSが2017年11月に買収した3DSIMの技術をベースとしている。3DSIMは3Dプリントのシミュレーションツールを開発していた企業である。作業環境としてはデスクトップもしくはクラウドから選べる。
「ANSYS Additive Suite」は上記のANSYS Additive Printと「Additive Science」「Workbench Additive」で構成するスイート製品であり、機械設計者と解析専任者が対象。構造解析CAE「ANSYS Mechanical」のアドオンとして提供する(単独利用不可)。3DSIMそのものではなく、相当の機能をANSYSのソルバーに置き換えたもので、トポロジー最適化やマイクロストラクチャ解析機能と連携できる。Additive Scienceに含まれるマイクロストラクチャ解析はボイド発生など金属の内部特性を考慮した評価が可能だ。同機能は現状ではβ版であり、2018年中のリリースを予定している次期バージョン「ANSYS 19.2」に含まれる予定だ。
従来の加工プロセスではトポロジー最適化で導いた、アンダーカットを含んだ複雑な形状の部品は作成しづらかったが、金属3Dプリンタを用いた直接製造により実現の可能性が高くなる。しかし金属積層においては、上述の通り熱変形などの製造上の課題があり、材料価格も樹脂と比較して高価である。新ツールを用いれば従来では実現できなかった部品が製造可能である。さらにあらかじめ変形や強度が検証できることで、造形の失敗を回避しやすくできるため、材料のロスも減らすことが可能だ。
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