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汎用CAE「ANSYS 19」、複雑化した解析の手間や時間削減を目指すCAEニュース(1/3 ページ)

アンシス・ジャパンは同社のCAEシステム「ANSYS 19」を発表。構造解析は亀裂進展解析やトポロジー最適化などの強化、流体解析は新しいモデルの追加とターボ設計機能の強化、電磁界解析は並列処理ライセンスの改定、操作性や計算速度の向上などがトピックだ。

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 CAEベンダー ANSYSの日本法人であるアンシス・ジャパンは2018年1月30日、同社のCAEシステム「ANSYS 19」を発表した。同製品は「複雑さを緩和することで、シミュレーションの活用拡大をさらに促進」をテーマとし、物理とデジタルが絡み合い複雑化したシミュレーションに取り組まなければならない設計開発者のコスト削減や時間削減というニーズに着目し開発したという(同日発表の「SCADE 19」について:「SCADE R19」は検証自動化ツールを強化、Simulinkのデータ取り込みにも対応(組み込み開発)

構造解析は、亀裂進展解析やトポロジー最適化など強化


アンシス・ジャパン テクニカルサポートマネージャー ユン チムン氏

 構造解析「ANSYS Mechanical」では、FEMモデルのインポート機能である「External Model」を強化。従来は、多種ソフトで設定した要素と接点のみしか取り込めなかったところ、今回は荷重や接触、シェル特性などの境界条件の取り込みが可能になった。CAD形状で作りこまれたねじ山の形状を簡略化した上、ボルト締め付け力や締め付け量を定義するボルトプリテンションの設定も取り込み可能だ。


ボルトプリテンションの概要(出典:アンシス・ジャパン)

 前バージョンの18から搭載したトポロジー(位相)最適化機能も強化した。トポロジー最適化はユーザーがあらかじめ与えた条件に基づいて、ソフトウェアが元形状から肉抜きしながら導き出す手法。今回は新たに、慣性負荷や、伝熱条件や温度負荷が最適化の条件として含められる。また引き抜き/押し出しの方向、対称、周期、制作制限事項などが組み合わせて設定できる。押し出し成型や引き抜き成型の条件が考慮できる。密度法の剛性に関わるペナルティーパラメータの設定、最適化領域や除外領域を要素単位で設定することも可能だ。併せて、「RSM(Remote Solve Manager)」を利用することで、修正と再計算を繰り返し高負荷になりがちなトポロジー最適化の計算においてクラスタマシンの活用が可能だ。スクリプトやバッチなどでの処理は不要で、簡易なGUIで利用できる。


トポロジー最適化の新機能(出典:アンシス・ジャパン)

 直行メッシュの階段状六面体メッシュ、形状適合六面体メッシュにも対応した。階段状六面体メッシュは積層造形の造形物の条件に近づけることが可能だ。形状適合六面体メッシュは複雑で有機的な形状に向いており、陽解法解析や生体医学関連などで活用できるという。CADの形状に「要素をどれだけ適合させるか」制御できる「Cartesian mesh spacing option」も追加した。角部の処理などで利用する境界層メッシュも品質向上した。六面体メッシュでは重複形状の処理能力が向上。ブロッキング手法であるO-Gridや、規則的なメッシュを生成するマップトメッシュについても改良した。


直行メッシュの新機能(出典:アンシス・ジャパン)

六面体メッシュについて(出典:アンシス・ジャパン)

 亀裂進展解析の新機能としてSMART(Separating, Morphing, Adaptive and Re-meshing Technology)を追加。ANSYS MechanicalのGUIで容易に利用でき、動画とコンター図、プローブによる表示が可能だ。SMARTは、静的解析と疲労解析に対応し、破壊基準としては、応力拡大係数、J積分、パリス則を利用する。また亀裂前縁領域の近傍のみリメッシングすることで効率的に計算できる。


亀裂進展解析のSMART(出典:アンシス・ジャパン)

 変形やひずみに合わせてメッシュを切りなおす機能「非線形解適合型リメッシング」(NLAD)では、適応範囲が広がり、精度が向上したという。ガラスのブローイング成形、柔らかい材料に棒を入れるといった、大変形を伴う現象の解析に向いている。流体圧を適用した際の構造解析にも利用できる。


NLADによる解析例(出典:アンシス・ジャパン)

 陽解法動解析にはジョイント機能を追加。歯車やベルトなど駆動部品に対して接合部に回転や円筒、並進、スロットなど、さまざまな種類のジョイントを定義できる。自動でパーツ間のジョイントを生成する機能も備える。

 ANSYSの流体解析ツールから温度や圧力のデータを構造解析に取り込む際、以前はCFD-postを利用してマッピングしていたが、「1 way-FSI」により構造解析ツールの中でマッピング可能になった。従来のCFD-postによるマッピングと比較し、「体積荷重の温度の場合で時間刻み当たり3倍、表面荷重で30〜40倍」(同社)高速となり、1日がかりの作業になることすらあるというマッピング時間の大幅削減が見込めるとしている。


1 way-FSI(出典:アンシス・ジャパン)

 構造解析ツールの並列計算においては、「流体に比べると、構造では使えるコアの数はだいぶ少ないが、バージョン19では3000コア以上の並列計算でもパフォーマンスが発揮できる」(アンシス・ジャパン テクニカルサポートマネージャー ユン チムン氏)としている。


ANSYS Mechanical 19の並列性能について(出典:アンシス・ジャパン)

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