金属3Dプリンタなど新事業にかける三菱重工工作機械、2030年に売上高1000億円へ:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
三菱重工工作機械は2018年7月4日、都内で事業説明会を開催。グローバル対応への強化や金属3Dプリンタへの参入などにより、2030年には現状の2倍以上となる売上高1000億円を目指す考えを示した。
ジェイテクトとの提携は破談に
ただ、一方で課題も大きい。成長を加速させる意味で意義があると見られていたジェイテクトとの工作機械分野における事業提携が破談となったのだ。
ジェイテクトと三菱重工工作機械は2017年12月に事業提携に向けた協議を開始。製品分野が重複せずに補完関係にあったことに加え、三菱重工工作機械側には、ジェイテクトが既にグローバルでの展開に成功していること、ジェイテクトが持つエレクトロニクス関連製品を利用できることなどの利点があった。ジェイテクトにとっても三菱重工工作機械が持つ大型やハイエンドの機種をラインアップに加えられる点はメリットがあると見られていた。しかし、話し合いを進めてきた結果、2018年5月に事業提携の検討および協議を中止することを発表している※)。
※)関連記事:工作機械分野での事業提携に向けた協議を中止
提携が中止になった理由について岩崎氏は「双方のシナジー効果を得るのが現段階では難しいことが分かってきたからだ」と述べている。
具体的には、期待されていた製品開発面、グローバル面で、それぞれの置かれている状況が大きく異なり、合わせるのに時間やコストが大きくかかることを理由とした。
製品開発面ではスタイルの違いを挙げる。岩崎氏は「当社は基本的には個別受注で、設計から生産も個別で対応する手法を取っていた。一方でジェイテクトでは、量産に近い形でモジュラー化などが進んでいる。本来はこれらを組み合わせることを目指したが、現実的には合わせることが難しいということになった」と語る。
さらに、海外展開については「ジュイテクトでは海外法人も基本的に日本の本社との一体運用が可能な体制となっているが、三菱重工工作機械では海外展開をM&Aなどにより実現してきており、海外法人が現地で個別のガバナンスを行っている場合も多い。これらを一体化するのが難しいという判断だった」と述べている。
現状では「三菱重工グループの一員として成長を目指す」(岩崎氏)としているが、2030年度までに売上高で2020年度の2倍の成長を実現するには、協業など非連続な成長は欠かせない。「今現在は特に話はないが、常にオープンであるというのが基本姿勢だ」とし、岩崎氏は協業なども視野に入れる。ただ、有効な協業を実現するためにも、まずは社内体制の整備などにもあらためて取り組まなければならないようにも見える。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 工作機械分野での事業提携に向けた協議を中止
ジェイテクトは、三菱重工業との間で進めていた、工作機械分野における事業提携に向けた協議を中止する。ジェイテクトによる三菱重工工作機械への資本参加を含め、正式契約に向けて協議が行われていた。 - 工作機械事業を承継した新会社を発足
三菱重工は、同社100%出資の新会社「三菱重工工作機械」の営業開始を発表した。三菱重工の工作機械事業を承継する新会社は、製造・販売の一体化で機動力を高め、コンサルティング業など新しいビジネスにも取り組むという。 - 工作機械も4.0へ、シェフラーとDMG森精機が描く「マシンツール4.0」
ドイツのインダストリー4.0が大きな注目を集める中、工作機械にもIoTを積極的に活用する動きが出てきている。軸受部品を展開するシェフラーと、工作機械メーカーのDMG森精機は工作機械のインダストリー4.0対応を目指す「マシンツール4.0」プロジェクトを推進している。 - アップルVSサムスン訴訟を終わらせた日本の工作機械の力
知財専門家がアップルとサムスン電子のスマートフォンに関する知財訴訟の内容を振り返り「争う根幹に何があったのか」を探る本連載。最終回となる今回は、最終的な訴訟取り下げの遠因となった「新興国への技術移転」の問題と「なぜ米国で訴訟取り下げを行わなかったのか」という点について解説します。 - 好況に沸く工作機械メーカーは盤石か!? 課題は営業力にあり
企業再生請負人が製造業の各産業について、業界構造的な問題点と今後の指針を解説する本連載。今回はリーマンショック前の勢いを取り戻しつつある日系工作機械メーカーの動向と課題について取り上げる。 - 足し引き自在で効果は無限大! 金属3Dプリンタと切削加工の複合機投入が本格化
「第27回日本国際工作機械見本市(JIMTOF 2014)」で大きな見どころの1つとなったのが、工作機械と金属3Dプリンタの複合機だ。金属を「足す」3Dプリンタと金属を「引く」切削加工機が組み合わさることでモノづくり現場にどういう価値をもたらすのだろうか。