金属3Dプリンタなど新事業にかける三菱重工工作機械、2030年に売上高1000億円へ:製造マネジメントニュース(1/2 ページ)
三菱重工工作機械は2018年7月4日、都内で事業説明会を開催。グローバル対応への強化や金属3Dプリンタへの参入などにより、2030年には現状の2倍以上となる売上高1000億円を目指す考えを示した。
三菱重工工作機械は2018年7月4日、都内で事業説明会を開催。グローバル対応への強化や金属3Dプリンタへの参入などにより、2030年には現状の2倍以上となる売上高1000億円を目指す考えを示した。
三菱重工工作機械は、三菱重工の工作機械事業を集約し2015年に三菱重工の100%出資で誕生した企業である※)。従業員数は約1000人で2017年度の売上高は457億円。歯切り盤や歯車研削盤などの歯車機械システムや、主軸内部冷却システムなどを持つ大型のマシニングセンタなどで特に強みを持つ。国内向けの歯車機械システムでは「60%のシェアを持つ」(同社)としている。設立以降、収益性改善や体質強化などに取り組んできたが、2018年度からは新たな中期経営計画を推進。「グローバルニッチトップ戦略で『負けない会社』の実現」を掲げ、さまざまな施策に取り組んでいる。
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三菱重工工作機械 代表取締役社長の岩崎啓一郎氏は「直近では自動車向け、半導体向け、建設機械向けなど、それぞれの分野が好調。工作機械業界は景気の影響を大きく受ける業界だが、景気の状況が変わっても利益を維持できる体制を築く。特定分野でのシェア1位や、新規領域への挑戦により『負けない会社』を作り上げたい」と述べる。
金属3Dプリンタへの期待
今後の成長の原動力の1つと位置付けているのが、半導体向けの常温ウエハー接合装置や微細レーザー加工機、2018年度にプロトタイプ製品のパイロット販売を開始する予定の金属3Dプリンタなどの、新規事業領域である。
既に微細加工ソリューションは、半導体や航空宇宙、医療向けなどで導入が進んでいる。同社の微細レーザー加工機は放電加工に比べて約6倍の加工速度があるとし「ハイエンドやオンリーワンの技術で差別化を推進していく」(岩崎氏)としている。
さらに今後大きく成長すると見込むのが金属3Dプリンタである。同社はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「次世代型産業用3Dプリンタ等技術開発」のプロジェクトに向けた、技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構(TRAFAM)に参加しており、2018年度は5年間の研究における最終年度となる。2019年度からの本格市場展開を前に、同機構で得た技術を生かした3Dプリンタを開発し2018年度に製品化を実現する計画である。
岩崎氏は「当社が取り組んでいる金属3Dプリンタは金属粉末を噴射しレーザーで溶かすDED(Directed Energy Deposition)方式を採用しており、単純な積層だけでなく、肉盛りや異種金属の接合などが実現できることが特徴。将来的に異種金属材料を混ぜ合わせて接合できる傾斜機能材料部品の実現などの可能性もあり、生産技術としてだけでなく材料の革命にもつながると考えており、今後の市場拡大に期待している」と述べている。
グローバル展開の強化
成長のために今後取り組みを強化しなければならないのが、海外展開である。他の工作機械メーカーの売上高における海外比率が50%を超えているのに対し、三菱重工工作機械は現状では海外比率はわずかに30%。国内比率が70%という国内偏重の状況となっている。
岩崎氏は「中国や米国などに販売していないことはないが、現状では国内中心であることは事実だ。中国では現在日系自動車メーカーを中心に販売しているが、欧州系などにどう提案していくかが課題。米州もM&Aを行ったFederal Broach Holdingsが、米国の大手自動車メーカーに導入しており、そのルートを使いたいところだが、現状ではそれほど生かせてはいない状況だ。これらを新たに開拓していく必要がある。2020年度までにこれらの準備を進め、2021年度からは海外での売上高を本格的に拡大する」と海外展開の方向性について述べている。
これらの取り組みを進めることで2030年度には売上高1000億円を目指すとしている。岩崎氏は「将来的な話なので保証するものではないが、やりきれていない領域も数多くあり、成長の余地はある」と述べている。
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