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タイヤの裏側にスポンジとシートを貼り付けてノイズが4分の1、2019年初にも発売タイヤ技術

東洋ゴム工業は、タイヤが原因で発生する車内の騒音を4分の1に低減する技術を開発した。タイヤのトレッド部の内側に多孔フィルムと円筒形スポンジを配置することにより、タイヤ内部の空気の振動によって発生するノイズを低減する。2019年初めにも開発技術を採用したリプレイス用タイヤを発売する計画だ。

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 東洋ゴム工業は2018年6月29日、タイヤが原因で発生する車内の騒音を4分の1に低減する技術を開発したと発表した。タイヤのトレッド部の内側に多孔フィルムと円筒形スポンジを配置することにより、タイヤ内部の空気の振動によって発生するノイズを低減する。2019年初めにも開発技術を採用した交換用タイヤを発売する計画だ。

 パワートレインの電動化によってエンジンに起因するノイズが減少している。これに対し、タイヤに起因するノイズの対策によって、より静粛性の高い車内空間の実現に貢献する。

タイヤから発生する車内の騒音を低減する技術を開発(クリックして拡大)

音を穴に通らせる

 タイヤが路面からの入力を受け、タイヤ内部の空気が振動して発生するノイズは、タイヤ空洞共鳴音と呼ばれる。タイヤ内部の空気の振動が車軸を介して室内にノイズとして伝わっており、走行中は常に発生している。トレッドパターンやタイヤの構造の工夫では解消するのが難しかった。

 東洋ゴム工業は、タイヤ内部の空気が走行中にどのような状態にあるかを粒子画像流速計測法によって分析した。トレーサー粒子が含まれた水中でタイヤを回転させ、トレーサー粒子の動きからタイヤ内部の空気の動き方を検証。その結果、周方向と垂直方向の2種類の空気の流れがあることが分かった。「シミュレーションには限界があるし、流速計ではタイヤ内部の空気の動き方全体を見ることが難しい。そのため粒子画像流速計測法で分析を行った」(東洋ゴム工業 技術第一本部 設計研究・技術企画グループ 担当リーダーの榊原一泰氏)。


走行中のタイヤ内部の空気の動き(クリックして拡大) 出典:東洋ゴム工業

 今回、東洋ゴム工業は、素材によって音を吸収するのではなく、空気の流れを応用してノイズを低減するアプローチを採用した。音が穴を通ると、穴の壁面での摩擦や、穴を通った後の空気流の渦によって減衰することを利用している。今回発表した技術では、空気の流れの向きに合わせて多孔フィルムを配置し、発生した音が穴を通る構造を設けた。多孔フィルムは、タイヤに16個配置した円筒形のスポンジによって連続した山なり形状となっており、周方向と垂直方向の2つの空気の流れに対応する。円筒形のスポンジが持つ中空構造も音の減衰に貢献するという。

 多孔フィルムとスポンジはポリウレタン製で、接着剤によってタイヤのトレッドの内側に取り付けている。さまざまなタイヤサイズに装着可能だという。重さはタイヤ1本あたり180g程度。走行テストの上、多孔フィルムとスポンジがタイヤの走行性能に影響を与えないことを確認しており、走行中の振動や衝撃に対する耐久性も確保しているという。東洋ゴム工業では多孔フィルムとスポンジのみの販売は行わない方針で、生産工程の中で同社製品のタイヤに取り付けて販売する。量産に向け、多孔フィルムとスポンジの取り付けは自動化を前提に準備を進めている。

多孔フィルムをタイヤの内側に配置した様子(左)。穴を通る時に音が減衰する仕組み(右)(クリックして拡大) 出典:東洋ゴム工業

 多孔フィルムと円筒形スポンジを実際に量産している同社製タイヤに装着し、走行テストでノイズ低減効果を検証した。その結果、タイヤ空洞共鳴音が該当する200〜250Hzの周波数帯でノイズを最大12dB低減した。「6dB下がると音圧が半分になるので、12dBでは音圧が4分の1になる。一般の方々にも体感していただける効果だ」(東洋ゴム工業 技術統括部門 技術第一本部長の守屋学氏)と自信を見せる。「コストアップになる技術ではあるが、静粛性を追求するお客さまに付加価値として提案していきたい」(守屋氏)

 タイヤ空洞共鳴音を低減する技術の1つには、ホイールに装着するレゾネーターがあり、ホンダはレゾネーターを「レジェンド」「ジェイド」「クラリティ フューエルセル」に採用している。東洋ゴム工業は、レゾネーターよりも広い周波数帯で効果を発揮できる点が今回発表した技術の特徴だという。「音が穴を通ることで減衰すること自体はわれわれの技術とレゾネーターは同じだ。ただ、レゾネーターは構造で効果が出る周波数帯が限られる。クルマは走り方によってタイヤ空洞共鳴音が変化するので、今回の開発技術は強みになる」(榊原氏)。


走行テストで最大12dBのノイズを低減できることを確認した(クリックして拡大) 出典:東洋ゴム工業

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