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8年ぶり刷新のプレミアムコンフォートタイヤ、静粛性の実力は乗って解説(1/3 ページ)

ミニバン人気が一段落したと思ったら、代わって盛り上がるSUV人気に押されて、セダンの市場はやせ細るばかりだ。全体としては縮小傾向にあるセダン市場だが、高級セダンに絞ってみるとむしろ販売台数は伸びており、セダンユーザーのプレミアム志向が強まっている傾向が見える。

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プレミアム志向を強めるセダンユーザー


横浜ゴムのプレミアムコンフォートタイヤ「ADVAN dB V552」。8年ぶりの新開発により、静粛性を36%も高めたことが何よりの特徴だ(クリックして拡大)

 横浜ゴムがプレミアムコンフォートタイヤ「ADVAN dB」を8年ぶりにリニューアルしたのも、プレミアム志向の強まるセダンのユーザーに向けて、さらなる上質な走りを提供したいためだった。開発で目指したのは2つの要素を徹底的に磨き上げること。それは群を抜くような圧倒的な静粛性と、高いウエット性能だ。

 高級セダンといっても、セダンならではのバランスの良さを鍛え上げた高性能スポーツセダンもあれば、とにかく上質感を最優先したジェントルなセダンもある。欲張りなオーナーの所有欲を満足させるのがプレミアムな高級セダンなのだ。

 だが幸いにしてADVANにはもう1つ、プレミアムなスポーツタイヤとしてADVAN Sportsというラインもある。

 「そうなんです。高性能な高級車用はADVAN Sportsに任せて、dBは本来の静粛性と安全性を高めるためのウエット性能の強化に磨きをかけることに専念しました」。そう語るのは横浜ゴム タイヤ消費財開発本部 タイヤ第一設計部部長の渡部弘二氏である。

 では具体的には横浜ゴムの開発陣がどのようにADVAN dBの静粛性とウエット性能を高めたのか、その技術的要素を探ってみよう。タイヤの静粛性を高めるには、トレッド面が路面をたたくことで発生するパターンノイズと、タイヤ内部で発生する振動に起因するロードノイズという2つの要因をそれぞれ減少させることが要求される。


タイヤの構造(クリックして拡大) 出典:横浜ゴム

 そこでまずタイヤ内部で発生するロードノイズ低減のために、タイヤの基本骨格であるコード設計から見直した。カーカスを引き締めるスチールベルトは幅広のサイレントベルトを採用して振動を抑制。その上に仕込まれるサイレントベースゴムもサイズを拡大し耳につきやすい100k〜160kHzのノイズを低減している。

 ショルダー部の剛性バランスも緻密にチューニングされている。ベルト端部を支えるサイレントエッジカバーとサイド補強ベルトにより衝撃を吸収しながらも振動を抑え静粛性や乗り心地を改善した。さらにショルダーゴムには発熱を抑える低燃費ゴムを採用することで転がり抵抗を軽減。乗り心地を上質に仕立てながら、ハンドリング性能も確保し、なおかつ静粛性を高めるために余計な微振動を抑え込む。自動車メーカーと同じように横浜ゴムも、プレミアムなセダンに乗るユーザーが欲張りであることを良く分かっている。

タイヤ内部の構造も静粛性のため、スチールベルトの幅やベースゴムの容量を増やし、乗り心地向上のためにショルダー部やサイド部の剛性などが最適化された(左)。写真左が従来品V551、同右が新製品であるV552。ストレートグルーブなど継承した要素もあるが、かなりトレッドデザインは進化した(右)(クリックして拡大)

 パターンノイズはトレッドデザインのキメ細かい作り込みによって発生を押さえ込んでいる。まずはブロックサイズを可能な限り小さくし、なおかつブロック剛性を確保するためにサイプで完全にブロックを分断させない非貫通サイプを採用し、高速安定性やステアリング応答性も確保するという万全ぶりだ。さらにブロックのエッジ部には部分部分に角を落とすエッジカットを施し、初期の偏摩耗を防いで静粛性を高めた。これらの工夫により最終的には36%も静粛性が高まったという。


トレッドデザインは静かさとウエット性能を最優先しながら、ADVANらしいハンドリング性能とドライグリップを高い次元で確保する工夫が盛り込まれている(クリックして拡大)

 ウエット性能の向上にもトレッドデザインが与える影響は大きい。先代から受け継いだ4本の太いストレートグルーブに加え、件のブロックサイズの小型化により溝が増えたことは、自ずとウエット性能を高めるためにも貢献している。

 トレッド面のゴムであるコンパウンドもウエット性能を高めるべく工夫が凝らされている。ウエット性能を高めるシリカの配合率を高めれば、ある程度までは性能向上が見込めるが、多くなると親水性のあるシリカと石油由来のゴムやポリマーは相性が悪く、シリカが集まりやすくなって内部で摩擦が起き転がり抵抗が増えてしまう。そこでシリカを小粒化すると共に界面活性剤を添加してコンパウンド中に分散しやすくすることで、シリカの配合率を増やしたそうだ。

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