ダイキンも「コト」売りへ、空調ソリューションの提供に向けIoTとAIに注力:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
ダイキン工業が2020年度を最終年度とする戦略経営計画「FUSION20」の後半計画(2018〜2020年度)について説明。2018年度の業績見通しである売上高2兆4800億円、営業利益2700億円に対して、2020年度には売上高2兆9000億円、営業利益3480億円まで伸ばす計画である。
空調ソリューション事業の立ち上げは北米と中国で期待
「IoT、AI技術を活用した空調ソリューション事業の加速」では、全ての空調機器をネットワークに接続し、得られた大量のデータを解析することにより新たな顧客価値を生み出して行く方針を打ち出した。そこから生み出す空調ソリューション事業としては「エネルギー・サービス・ソリューション事業」と「空気・空間エンジニアリング事業」の2つを想定している。
エネルギー・サービス・ソリューション事業では、エアコンとしての「モノ」売りから、空調サービスを提供する「コト」売りへの移行が重要になるが、同社の空調事業が大幅な成長を続けているアセアンとインド市場については、高効率を特徴とするインバータ搭載エアコンを拡売する「モノ」売りが続く見込み。「コト」売りを行うのは成熟市場であり、日本、北米、欧州から立ち上げていくことになる。十河氏は「北米のアプライド事業(ビルや工場向けの空調設備事業)の更新需要から始められるのではないか」と見込む。
また空気・空間エンジニアリング事業については、開発、製造、販売を一体となって動かせる中国市場での取り組みから立ち上げることになりそうだ。「空気清浄を行うIAQ(室内空気質)のアイデア商品や差別化商品を投入するとともに、それをグローバルで展開していきたい」(十河氏)という。
この他、IoTやAIに注力するために、人材の早期獲得と育成を進める。大阪大学と協力して設立したダイキン情報技術大学を2017年末から開講するなどして、2017年度の1年間で約100人のIoT/AI人材を採用した。2018年度入社の新入社員についても約100人を対象に教育を進めており、2020年度までに約700人のIoT/AI人材の確保を目指す。十河氏は「正直なところ、全ての空調機器をネットワークに接続してデータを集められるようになったときに、この数で足りるかどうかは分からない。さまざまな企業との連携や人脈作りも含めて、多面的に取り組んでいく必要がある」と説明する。
13テーマの1つとなっている「空調事業を支えるモノづくり力の強化」では、全てのグローバル空調生産拠点をネットワークでつなぐ「工場IoTプラットフォーム」を基にしたデジタルファクトリーの構築に取り組む。2017年度時点で、米国、インド、ベトナム、日本の4拠点を接続しており、2024年度には世界の約90拠点の接続を完了する見込みだ。「現場レベルではつながることによる見える化から始めようとしている段階。FUSION20の後半の中で、デジタルファクトリーに関する数値目標を決められるようにしたい」(十河氏)としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- IoTで熟練技術者の技を盗め、生産技能伝承でダイキン工業と日立が協業
ダイキン工業と日立製作所は、IoTを活用し熟練技術者の技能伝承を支援する次世代生産モデルの確立に向け協業する。まずは空調機器の戦略技能の1つであるろう付け工程のデジタル化を実現し、今後さらに対象技能を広げていく方針である。 - 工場IoTは既に実益が得られる手段、カギを握る「目的」と「協創」
MONOistを含むITmediaの産業向け5メディアは、セミナー「MONOist IoT Forum in 大阪」を開催した。三菱電機、ダイキン工業、IHS Markitなどが登壇した同セミナーのレポートを前後編に分けてお送りする。 - 大企業病にアイデアソンが“効く”――IoT×空調で新しい価値を創造せよ
米Intelの日本法人であるインテルと空調設備大手のダイキン工業は共同で、2014年9月10日に「IoT×空調」をテーマにした“アイデアソン”を実施した。発想の柔軟さが欠けがちな大企業病にアイデアソンは“効く”のか? - BIM対応のクラウド型空調設計支援アプリケーションで業務の省力化を支援
ダイキン工業は、BIM対応のクラウド型空調設計支援アプリケーション「DAIKIN-BIMアプリケーション(仮称)」を発表した。人手不足が顕在化する建設業界で、空調機器関連業務の省力化を目指す。 - 製造業向け業務アプリケーションを容易に自社開発できるシステムを発売
ダイキン工業は、開発予算管理や部品構成管理などの製造業向けの業務アプリケーションを企業が自社で容易に開発できるシステム「Smart Innovator」を、2017年4月1日に発売する。 - ダイキンが新冷媒の特許を無償開放、HFC-32採用空調機器の市場拡大へ
ダイキン工業は、新冷媒として注目されている「HFC-32を用いた空調機」に関する特許を無償開放する。新冷媒採用空調機器の市場拡大を促す。