既存の公共交通と自家用車ライドシェアの共存へ、富士通と福島県伊達市:富士通フォーラム2018
富士通はユーザーイベント「富士通フォーラム2018 東京」において、福島県伊達市で試験運用中のライドシェアを使ったオンデマンド交通サービスの成果を発表した。
富士通はユーザーイベント「富士通フォーラム2018 東京」(2018年5月17〜18日、東京国際フォーラム)において、福島県伊達市で試験運用中のライドシェアを使ったオンデマンド交通サービスの成果を発表した。
路線バスなどの公共交通手段がカバーできていない地域を対象としたサービスで、利用者の事前の申し込みに合わせて運行する乗り合いバスと、地域住民の自家用車による有償運送を組み合わせる。これにより、地域内の移動やバス停から目的地までのラストワンマイルの移動を支える。
予約締切のないサービス
自家用車による有償運送は規制緩和が進み、国土交通省ではなく自治体や運輸支局の許可で実施可能だ。自家用車の有償運送では、タクシーの運賃の半額まで請求することができる。また、保険会社が有償運送に対応した自動車保険も展開しており、環境が整い始めている。
利用者が運行事業者に申し込む従来のデマンド交通では、時間帯や地域によって需要にばらつきがあり、車両の稼働率や乗り合い率を高めるのが課題となる。また、利用車の利便性に合わせて運行計画を柔軟に見直すことや、ドライバーの確保も困難になっていた。
富士通と伊達市の取り組みでは、乗り合いバスなど従来のデマンド交通でカバーしきれない需要に対し、事前に運転可能な時間帯を登録した地元住民の自家用車で対応する。デマンド交通の車両と有償運送の自家用車の運行スケジュールを一元管理し、利用者の送迎希望時間や乗車場所、目的地、ドライバーの地域住民が登録した運転可能時間を踏まえてマッチングを行う仕組みを構築した。
従来のデマンド交通では、一定時間で予約を締め切って運行経路を決定するため、ユーザーが載りたい時に乗れないことも多かった。伊達市で運用するシステムでは、予約に時間のバッファーを設け、適切な車両の運行計画に新規予約を柔軟に追加できるようにした。これにより、乗り合い率を向上しているという。また、利用者が安心して自家用車の有償運送を利用できるようにするため、自家用車には運転評価端末を搭載し、オペレーターが運転状況を記録およびチェックしている。
期間限定の実証実験にはしない
オンデマンド交通サービスの試験運用を始めた2017年は、運行計画を表示するタブレット端末などがドライバーにうまく使ってもらえるかどうかを検証しながら一部の地域でサービスを実施した。2018年は対象エリアをさらに拡大しながら、本格的に有償での運送を始める計画だ。
このサービスに携わる富士通 MobilityIoT事業本部 MaaS事業部の金載烈氏は「これまでの試験運用で利用者がご近所にサービスを口コミしてくれたり、自家用車のドライバーから『出掛けるきっかけになって良い』と言ってもらったりした。出掛ける人が増えれば地域の経済も活気づく。また、オンデマンド交通サービスがあることで、これまでクルマで移動していた観光客は、お酒を飲むなどいろいろな過ごし方をできるようになった」と説明。
また、金氏は「期間限定の実証実験ではなく、今後も地域に使い続けてもらうサービスにする。自治体の支援にも依存しないようにしていく」と語った。
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