自動運転車でみなとみらい巡り、配車サービスは「地域との協力が不可欠」:モビリティサービス
日産自動車とディー・エヌ・エー(DeNA)が、自動運転車による配車サービス「Easy Ride(イージーライド)」の実証実験の方針や実験車両を披露した。
日産自動車とディー・エヌ・エー(DeNA)は2018年2月23日、横浜市内で会見を開き、自動運転車による配車サービス「Easy Ride(イージーライド)」(※)の実証実験の方針や実験車両を披露した。
(※)日産とDeNAの配車サービスが一般向け実証実験、無人運転車投入は次のフェーズで
2017年12月から公募した一般モニター300組が参加する。自動運転車を走らせるのは、日産自動車本社、パシフィコ横浜、商業施設のワールドポーターズ、けいゆう病院を結ぶ4.5kmの周回ルートで、参加者が専用のアプリから乗降地を指定して予約する。実施期間は2018年3月5〜18日。
実証実験を通して、車両の管制センターなど無人運転車の配車を想定したサービス形態の検証や、自治体や地域の交通事業者との連携体制の構築に取り組む。実証実験終了後は、2020年代早期の本格的なサービス開始に向けて、エリア拡大の準備や地域パートナーの開拓、限定された環境での試験的なサービス導入を計画している。イージーライドの本格稼働では、ビジネスとして意味のある規模を目指し、複数の地域での導入も視野に入れる。
自動運転に使うセンサーは
実証実験には、電気自動車「リーフ」の先代モデル2台を使う。先代リーフをベースにセンサーを追加して、自動運転で走行する。運転席には常に係員がおり、周辺監視や緊急時の操作を行う。警察庁が定めた「自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン」に準拠して実施する。
センサーはカメラ13個やレーザースキャナー6個を搭載し、車両の周囲360度を認識。前方監視用のミリ波レーダーや、現在地を検出するためのGPSアンテナも使用している。また、車両管制センターに現在地や速度、バッテリーの残量、センサーの認識結果などを送信するためのLTE通信機も搭載する。
量産モデルへの展開も視野に、新しいセンサーを採用した。前方監視には単眼カメラ3個とステレオカメラ1基を用いる。ステレオカメラは障害物検知に、3個の単眼カメラは画角や向きが異なり、2つは信号認識に、1つは車線など前方の環境認識に使う。信号認識に2つのカメラを使用するのは、最も近くにある信号と少し先の信号を同時に検出するためだ。「イージーライドのためだけの技術にはしない。量産モデルへ展開する時に、3個のカメラは一体化できるのかどうか、カメラにどのような性能が必要か、検証していく」(日産自動車の説明員)。
車両管制センターでは実験車両の遠隔操作は行わない。ユーザーが予約した日時や場所に合わせて配車する指示などがメインとなる。また、車内の乗客からの問い合わせなどにも対応する。自動運転車のルート変更の指示なども車両管制センターから行う可能性がある。移動サービスの車両管制センターとしての役割や監視すべき具体的な項目は、実証実験の中で洗い出していく。「一般モニターは年齢や性別に偏りが出ないようにスクリーニングした。300組で十分なデータが得られるだろう」(日産自動車の説明員)。
今回の実験車両が2台のみとなるため、車両管制センターで監視に当たるのは1人。しかし、事業としてイージーライドを開始する時には、使用する車両が大幅に増える。「使ってみたいというポジティブなニーズはとても大きく、場合によってはタクシー会社と大差ない台数の車両をサービスに使う可能性もある」(DeNA 執行役員 オートモーティブ事業本部長の中島宏氏)としており、車両管制センターは少ない人数でより多くの台数を管理することも課題となる。「ルートの最適化など自動化できる作業は自動化していく必要がある。人の関与をどれだけ減らせるか」(DeNAの説明員)。
中島氏は、イージーライドが交通事業者や自治体、地域経済との協力を前提としていることを強調した。「今回の実証実験では、近隣店舗などで使えるクーポンを40件用意し、イージーライドの利用者と地域経済を結び付ける。サービスが本格稼働する時には、乗降地点や充電スポットを提携店舗に提供してもらったり、運賃の一部を負担していただいて提携店舗に乗客を誘導したりといった連携の在り方を考えている」(中島氏)。
また、バスやタクシー、鉄道など既存の交通手段と競合しないこともアピールした。「地域の交通事業者の方々は、地元の移動ニーズを把握しており、運行ノウハウや車両資産もある。交通事業者から配車サービスに対する明確な反対は出ていない。反対ではなく、協力できるようにしていきたい」(中島氏)。
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