「モノ」ではなく「コト」で表現、ジェイテクトがMRで訴えた「IoE」の真価:ハノーバーメッセ2018
ジェイテクトは、ハノーバーメッセ2018において、同社が推進するスマートファクトリーコンセプト「IoE」を提案。あえて製品をおかず、同コンセプトをMRを通じて「コト」訴求し、来場者の関心を集めた。
ジェイテクトは、ハノーバーメッセ2018(2018年4月23〜27日、ドイツ・ハノーバーメッセ)において、同社が推進するスマートファクトリーコンセプト「IoE」を提案。あえて製品をおかず、同コンセプトをMRを通じて「コト」訴求し、来場者の関心を集めた。
ジェイテクトは、スマートファクトリーのコンセプトとして、モノだけをつなげる「IoT(Internet of Things)」ではなく、人もモノもつなげる「IoE(Internet of Everything)」を訴求。人と設備が進化し続ける工場像を描いている。同社ではIoEの導入には「つなげる(モノをつなげる)」「見える化(情報をつなげる)」「情報を収集、解析し、価値を創出(改善をする)」「データを共有化(範囲を広げる)」の4つのステップがあるとし、それぞれのステップにおける現実的なソリューションを用意して提供を進めている。
今回のハノーバーメッセでは特に「情報を収集、解析し、価値を創出」のステップに当たる「バリューソリューション」を、MR(Mixed Reality)に活用して説明した。具体的には、MR上でマシニングセンタを映し出し、機械内部に取り付けたセンサーからの情報を収集する様子を紹介した。このマシニングセンタ内のセンサーデータを基にリアルタイムで異常を検知し、機械が止まってしまう前に保全を行う様子を解説した。
製造機械の展示会で実際の製品を展示しないという出展内容は異例ではあるが、ジェイテクトではIoEソリューションにおいては「モノ」ではなく「コト」での新たな価値を積極的に訴求しており、2016年の日本国際工作機械見本市(JIMTOF)でも実機をほとんど出さずコンセプトを全面に押し出した展示で注目を集めた※)。
※)関連記事:あえて実機は置かない、ジェイテクトが振り切った「IoE」の世界
今回の出展の手応えについてジェイテクト 取締役副社長の井坂雅一氏は「展示内容としては挑戦的なものがあったが、ソリューションとして、IoEのコンセプトを訴求するために工夫した。来場者によるMRの体験も想定したよりも多く、反応は非常に良かった。予防保全への関心は非常に高いと感じている」と手応えについて述べている。
ドイツ製造業から注目を集めた「アンドン」
ジェイテクトでは、このMRによるIoEの紹介とともに、IoEソリューションのステップ2である「見える化」を実現する「レイアウトアンドン」も設置し、製造現場で今何が起こっているのかを一目で確認できる価値を訴えた。これは既に協力会社での実証を進めているもので、実際に欧州企業からの関心も高かったという。
井坂氏は「アンドンはトヨタ生産方式では当たり前のものだが意外に欧州製造業からの関心が高いことは発見だった。現場での情報の見える化については、ドイツや欧州の製造現場でもどのように実現すべきかという点で、さまざまな模索があるように感じた」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 人も共に成長する工場へ、ジェイテクトが描く「IoE」4つのステップ
MONOistを含むITmediaの産業向け5メディアは、セミナー「MONOist IoT Forum in 名古屋 〜先進企業の事例からひもとく製造業『第4次産業革命』の今〜」を開催した。後編では、ジェイテクトの特別講演とその他の講演内容をお届けする。 - あえて実機は置かない、ジェイテクトが振り切った「IoE」の世界
ジェイテクトは「JIMTOF2016」において、あえて工作機械の実機展示点数を大幅に減らし、「IoE」として進めているIoT時代の工作機械や工場のあるべき将来像を紹介。その基盤となるPLC「TOYOPUCシリーズ」などをアピールした。 - 信号灯から始めるIoT、ジェイテクトが古い機械でも接続できる「見える化」を提案
ジェイテクトは、CPS/IoTの展示会として生まれ変わった「CEATEC JAPAN 2017」に初出展。古い機械でも簡単に稼働監視が行える「JTEKT-SignalHop」など、簡単にIoTによる生産革新に取り組めるソリューションを提案した。 - 「IoE」を世界へ、ジェイテクト亀山工場が作る「見える化」の標準形
インダストリー4.0など工場のスマート化への動きが加速している。ジェイテクト亀山工場では「IoE」コンセプトをベースに独自機器により異種環境間のデータ取得を可能とし、生産性向上を実践する。同工場の取り組みを紹介する。 - スマートファクトリーはエッジリッチが鮮明化、カギは「意味あるデータ」
2017年はスマートファクトリー化への取り組みが大きく加速し、実導入レベルでの動きが大きく広がった1年となった。現実的な運用と成果を考えた際にあらためて注目されたのが「エッジリッチ」「エッジヘビー」の重要性である。2018年はAIを含めたエッジ領域の強化がさらに進む見込みだ。 - スマートファクトリーがいよいよ現実解へ、期待される「見える化」の先
ドイツのインダストリー4.0がきっかけとなり関心が高まった、IoTを活用したスマートファクトリー化への動きだが、2017年は現実的成果が期待される1年となりそうだ。既に多くの実証成果が発表されているが、2017年は、実導入ベースでの成功事例が生まれることが期待される。