インダストリー4.0の中心地でモノづくりを訴求、日本ブースの悲喜こもごも:ハノーバーメッセ2018(2/2 ページ)
日本能率協会とロボット革命イニシアティブ協議会はハノーバーメッセ2018に共同ブースを出展し、ジャパンパビリオンを設置した。ジャパンパビリオン内に出展した6社の動向を紹介する。
日本式モノづくりの強みを広げるアビームコンサルティング
アビームコンサルティングは日本国内での製造業におけるIoT活用のコンサルティング実績を強みとし、製造業IoTのデータソリューション「IoT Data-Driven Manufacturing Solution」をアピールした。
アビームコンサルティング ドイツ支店 シニアマネージャーの原田航平氏は「ドイツでも、データを取得してその後の価値にどうつなげてよいのか分からないとする声が多い。一方で製造業の現場では日本と同じく4M(人、機械、材料、方法)を中心に改善を進める取り組みもなじんでおり、日本でのノウハウが生きる」と手応えについて述べる。会場では中国やインドの企業などから熱心な話があった他、日本企業の訪問が多いとしている。
金型とAIを組み合わせ熟練技術者の頭脳の再現を目指すIBUKIとLIGHTz
同じO2グループに所属し、AIを生かしたモノづくりについて研究開発を進めているAI(人工知能)ベンチャーのLIGHTzと、山形県の金型加工業であるIBUKIは、熟練技能者の思考を汎知化し次世代につなぐAI「ORGENIUS」をハノーバーメッセで出展した。
LIGHTzとIBUKIでは「熟練者の知見を取り入れたIoT、金型の息づかい可視化プロジェクト」を推進しており、射出成形機での成形などを対象に、金型のセンシングにより熟練者のノウハウを言語化する取り組みを進めている。ブースでは、これらのデータ活用の内容を紹介した。
手応えについてIBUKI 情報システムグループ 谷口想一氏は「検査画像と不具合実績から熟練技術者は何を見ているのかという点をインタビューによる聞き取りで抽出しそれを学習データ化することで熟練技能者の思考様式をブレインモデルとして再現。失敗のないプレスや射出成形が実現可能となる」と述べている。ただ「データモデルの詳細までは関心を持って聞いてくれる人は少なく、成形品の方に関心が集まっていた」(谷口氏)と出展の状況について語る。
可搬式のダブルチャンバー方式測定器の価値を訴える東海エレクトロニクス
技術商社である東海エレクトロニクスは、山洋電気が開発した小型のエアーフローテスターによる可搬式のダブルチャンバー方式測定器を出展した。大型のダブルチャンバー方式測定器と異なり、小型で低価格であることから従来使用していなかった領域や小型の装置などでの利用を想定。ファン設計の最適化を提案していく。
東海エレクトロニクス ドイツ法人の社長 杉藤広樹氏は「ニッチな領域の製品でありすぐに反応が出るようなものではないが、日本ではゲーム機など多くの領域で採用が進んでおり、その利点は欧州などでも受け入れられるはず」と述べている。
独自の外観検査技術を訴えるマクシスエンジニアリング
マクシスエンジニアリングは、ホログラム技術による外観検査技術を訴求した。ホログラム技術を用いた特殊な照明により、微細なキズや塗装不良を簡単に観察できるようにできる。エンジニアリングによっては、ロボットなどを組み合わせて自動検査などを可能とする。
マクシスエンジニアリング 装置部 開発室 グループリーダーの西郷知泰氏はハノーバーメッセでの手応えについて「非常に良い。ビジネスにつながりそうな企業との出会いが数多くあった。サンプルや技術デモを求めるような案件などもあり、他にない技術という自信を持つことができた」と語った。
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