“無人運転車”が指定した時間と場所に荷物を運ぶ、 ロボネコヤマトが新たな実験:モビリティサービス(2/2 ページ)
ディー・エヌ・エー(DeNA)とヤマト運輸は、神奈川県藤沢市でレベル3の自動運転車を使った配送の実証実験を開始した。自動運転社会を見据えた「ロボネコヤマト」プロジェクトの一環だ。
不在配達の解決策として手応え
両社がサービスを1年間試験的に実施したところ、昨今課題となっている不在配達の解決策となる手応えを感じたという。実証実験の配送件数は最大50件、直近の2018年3月の平均が20件で、不在配達の比率は0.53%となった。従来と比較して、不在で受け取れなかった人が圧倒的に少なくなったとしている。
また、利用者からは、ピンポイントで受け取り時間を指定できる点や、配達を待つストレスがないことが高評価だった。今後も使いたい、ほかの人にも勧めたい、といった回答も多数得られたという。サービスのリピート率は47.3%で、両社ともオンデマンド配送の受容性が十分にあると判断した。
2018年3月までのオンデマンド配送の実証実験は、ドライバーとして運送業未経験者や女性を多く雇用して実施した。従来の配送ドライバーは一定以上の運転技術が要求され、重い物も運ぶ力仕事や客先とのコミュニケーション、効率的なルート設定を全てこなさなければならなかった。「運送業未経験者が大半でもサービスは回せた。ロボネコヤマトなら、コミュニケーション能力の重要度は高くないし、ルートはAIが決める。自動運転技術が確立されればドライバーの運転スキルも重要でなくなる。さまざまな人が宅配サービスで働ける可能性が生まれ、人手不足の解消にもつながるのではないか」(DeNA オートモーティブ事業本部 ロボットロジスティクスグループリーダーの田中慎也氏)。
カメラと信号制御機の情報から認識
今回スタートした実証実験の自動運転車は、アイサンテクノロジーが技術面で協力した。車両には配送地域の高精度地図が搭載されており、ライダー(LiDAR:Light Detection and Ranging)などのセンサーの認識結果と高精度地図を照合して自車位置を推定しながら走行する。走行速度は法律に従う。
実験車両には信号の検知に対応したカメラを搭載しているが、センシングの冗長性を確保する目的で、携帯電話通信網を使って信号情報を車両に配信する実験も行う。信号制御機に専用の無線装置を取り付け、信号の色や信号が変わるまでの残り時間をLTEでDeNAのクラウドを経由して車両に送信。この情報を元に発進と停止を制御する。警察庁が定める「信号制御機に接続する無線装置の開発のための実験に関する申請要領」に基づく実験としては初の事例だという。
関連記事
- 自動運転の宅配「ロボネコヤマト」、まずは非対面の荷物受取から実用実験
DeNAとヤマト運輸は、2017年4月17日から2018年3月31日まで神奈川県藤沢市内の鵠沼海岸、辻堂東海岸、本鵠沼の3エリアで、自動運転社会を見据えた「ロボネコヤマト」プロジェクトの実用実験を始める。まずは、非対面型受け取りサービスの検証が実験の中核となる。 - 自動運転宅配サービス「ロボネコヤマト」はなぜ“実用実験”なのか
ディー・エヌ・エー(DeNA)とヤマト運輸は、自動運転技術を活用した次世代物流サービスの開発を目的とする実用実験プロジェクト「ロボネコヤマト」を発表した。2017年3月から1年間、政府が指定する国家戦略特区で実施する。 - スマホゲームは既存市場を食わなかった? 「MaaS」も新車販売をつぶさない?
モビリティサービスとは何か、既存の自動車業界のビジネスにどのような影響を与えるのか。DeNAの中島宏氏が説明した。 - 自動運転車でみなとみらい巡り、配車サービスは「地域との協力が不可欠」
日産自動車とディー・エヌ・エー(DeNA)が、自動運転車による配車サービス「Easy Ride(イージーライド)」の実証実験の方針や実験車両を披露した。 - 2020年に10万人不足するトラックドライバー、自動運転は物流を救えるか
DeNAと共同で新しい物流サービスの開発に取り組むなど、自動運転技術の活用に積極的なヤマト運輸。ヤマトグループ総合研究所の荒木勉氏が、自動運転技術がもたらす物流サービスの可能性や物流業界の将来の課題について説明した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.