乗るしかない、この第4次産業革命というビッグウエーブに:第4次産業革命基礎解説(5/5 ページ)
本稿では、第4次産業革命という言葉の持つ意味、第4次産業革命を推し進める「デジタライゼーション」と「デジタルツイン」、第4次産業革命で重要な役割を果たす世代、そして第4次産業革命において日本の持つ可能性などについて解説する。
第4次産業革命で重要なSTEM分野で優位な位置にある日本
日本はこのSTEM分野において非常に優位な位置にいる。これまで築き上げてきたエコシステムが奏効しているからだ。100万人当たりの研究者数や研究開発費の支出割合などのさまざまなパラメーターが日本の優位性を示している。例えば、産業研究所(IRI:Industrial Research Institute)の2016年レポートによれば、日本はGDPの3.4%を研究開発に投資しているという。この値は世界的にも最高水準にある。
一般的に人は、25歳あたりで社会人の仲間入りをし、その後さまざまな業務経験を経て、60〜65歳ぐらいで引退する。しかし、医療の発達のおかげで、先進国では平均寿命が約100歳まで延びると予想されている。そうなれば、25歳で就職しても、その後60〜65年は働かなければならない。
一方、技術は常に変化している。10年前は「WhatsApp」も「Twitter」もGoogleの自動運転車もなかった。ミレニアム世代が自分のスキルを常に社会に適合させていくには、新しいスキルを学び、継続的に高めていく必要がある。
第4次産業革命により、標準化され、直感的に理解できるような機能は、もはやスマートマシンにアウトソーシングされるようになるだろう。人口ボーナスが、もはや国の経済発展に重要な要素ではないことが証明されるかもしれない。日本のSTEMを中心としたエコシステムや高度なスキルと経験を有する労働力が、日本をスマート社会へと進化させる可能性は十分にある。日本政府が採択した「Society 5.0」イニシアチブに対して、第4次産業革命はこの社会的転換を補完するものとなるだろう。
参考文献
- "Civilization, The West and the Rest" by Niall Ferguson
- "The Demographic Cliff" by Harry S. Dent , Jr
- "The Singularity is Near"(When Humans Transcend Biology) by Ray Kurzweil
- "The Design of Future Things" by Donald A. Norman
- "Phenomenology"(Basing Knowledge on Appearance) by Avi Sion
- "Average is Over" by Tyler Cowen
- Siemens Digital Enterprise by Prof.Dr.Siegfried Russwurm in "The Digital Enterprise" by Karl-Heinz Streibich
- "Outliers" by Malcolm Gladwell
- "Future of Jobs" report from World Economic Forum
- "2016 Global Manufacturing Competitive Index" from Deloitte Global and the Council on Competitiveness
- "2016 Global R&D Funding Forecast" from Industrial Research Institute(IRI)
- "Economic Survey 2015 - 16" from Government of India
- Wikipedia page on Gross World Product(historical and pre-historical estimates)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 第4次産業革命って結局何なの?
製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。しかし、そこで語られることは抽象的で、いまいちピンと来ません。本連載では、そうした疑問を解消するため、第4次産業革命で起こることや、必要となることについて分かりやすくお伝えするつもりです。第1回目はそもそもの「第4次産業革命とは何か」を紹介します。 - インダストリー4.0って何でこんなに注目されているの?
製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。しかし、そこで語られることは抽象的で、いまいちピンと来ません。本連載では、そうした疑問を解消するため、第4次産業革命で起こることや、必要となることについて分かりやすくお伝えするつもりです。第2回と第3回ではきっかけを生んだドイツの「インダストリー4.0の意義」を2つの切り口から紹介します。 - なぜドイツはインダストリー4.0を生み出す必要があったの?
製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。しかし、そこで語られることは抽象的で、いまいちピンと来ません。本連載では、そうした疑問を解消するため、第4次産業革命で起こることや、必要となることについて分かりやすくお伝えするつもりです。第3回ではなぜドイツがインダストリー4.0を生み出す必要があったのかということを紹介します。 - ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【前編】
「インダストリー4.0(Industrie 4.0)」という言葉をご存じだろうか? 「インダストリー4.0」は、ドイツ政府が産官学の総力を結集しモノづくりの高度化を目指す戦略的プロジェクトだ。インダストリー4.0とは何なのか。同プロジェクトに参画するドイツBeckhoff Automationグループに所属する筆者が解説する。 - ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【中編】
ドイツ政府が主導するモノづくりの戦略的プロジェクト「インダストリー4.0」について解説する本連載。今回はメインテーマに「インダストリー4.0」を据え、盛り上がりを見せたドイツの産業見本市「ハノーバー・メッセ」の出展の様子について、現地を訪問した筆者が紹介する。 - ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【後編】
ドイツ政府が主導するモノづくりの戦略的プロジェクト「インダストリー4.0」について解説する本連載。今回は「インダストリー4.0」の課題やドイツ政府が狙う核心に迫るとともに、日本のモノづくりがどの方向に進むべきかという提言を行う。