乗るしかない、この第4次産業革命というビッグウエーブに:第4次産業革命基礎解説(4/5 ページ)
本稿では、第4次産業革命という言葉の持つ意味、第4次産業革命を推し進める「デジタライゼーション」と「デジタルツイン」、第4次産業革命で重要な役割を果たす世代、そして第4次産業革命において日本の持つ可能性などについて解説する。
第4次産業革命に最も影響力を持つのはミレニアル世代
マルコム・グラッドウェルの著書「Outliers(邦題:天才!成功する人々の法則)」で、筆者は2つの興味深い知見を得た。1つは、ブルネイ国王、クレオパトラ女王、ビル・ゲイツ、ムケシュ・アンバニらの名が連ねられていた世界人類史上最高の大富豪75人のリストのうち、75人中25人が米国人であり、その25人中14人が1832〜1840年の9年間に生まれだったことだ。例えば、ジョン・ロックフェラー、アンドリュー・カーネギー、JPモルガンなどである。もう1つは、先述したビル・ゲイツの他、スティーブ・ジョブス、エリック・シュミット、ビノッド・コースラに関するもので、彼らは皆、1955年に生まれている。
これらの人々の共通点は、産業革命が起こった時代に大成功を収めたことだ。1832〜1840年に生まれた人々は第2次産業革命、1955年生まれの人々は第3次産業革命が該当する。
では、第4次産業革命の時代に最も影響力を持つのはどの世代になるのだろうか。おそらく、1985〜2000年に生まれたミレニアム世代になるだろう。彼らは第4次産業革命の間に社会人になった年齢層だ。
第4次産業革命をけん引している革新的な技術の一部を以下に示す。
- AR(拡張現実)、VR(仮想現実)
- 高度なロボット工学
- アディティブマニュファクチャリング(積層製造、付加製造)
- クラウドコンピューティングとビッグデータ
- データセキュリティ
- AI(人工知能)とIoT
- 機械学習による知的労働の自動化
- 自律生産システム
- ブロックチェーン
- 遺伝子工学とナノテクノロジー
最先端技術の分野で働きたいと熱望する学生にとって、これらの分野は関心の的だ。そして、これらの技術は現実の世界を飛び越えてエンジニアリングの問題を解決している。
例えば、2012年にNASA(米国航空宇宙局)の探査ローバー「キュリオシティ」が火星に着陸した。重量900kgのこの探査機は、惑星間を253日かけて3億5200万マイル(5億6650万km)飛行し、火星の大気圏に突入、降下、着陸するという偉業を達成したのだ。NASAの科学者がこの探査機の設計と検証を行った唯一の方法が、上記のような技術を活用したバーチャル環境でのシミュレーションだった。
新しい技術分野が開発され発展するようになって、国や組織が抱える大きな課題の1つになっているのが適切な人材の確保だ。多くの国が、自国の教育プログラムにおいてSTEM(科学、技術、工学、数学)分野に重点を置き始めている。世界経済フォーラムのレポート「Future of Jobs(仕事の未来)」によれば、産業界において現在需要のある雇用機会や専門職のほとんどは5〜10年前には存在していなかったという。同レポートでは、雇用の変化に一番大きな影響を与える要素は「技術」であるともしている。さらに、雇用機会が今後一番増える業種はSTEM関連の分野であると予測している。
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