日本企業が海外M&Aを活用する上で留意すべきポイントと「9つの行動」:製造マネジメントニュース
経済産業省は「我が国企業による海外M&A研究会報告書」および「海外M&Aを経営に活用する9つの行動」を取りまとめ、発表した。海外M&Aの成功には、周到な事前準備と、実行後の世界的成長に向けた取り組みが重要だとしている。
経済産業省は2018年3月27日、「我が国企業による海外M&A研究会報告書」および「海外M&Aを経営に活用する9つの行動」を取りまとめ、発表した。
報告書では、海外M&Aの成功には買収の実行局面だけではなく、周到な事前準備と、実行後の世界的成長に向けた取り組みが重要だとする。さらに、海外M&Aを成功させる3つの要素として「M&A戦略ストーリーの構想力」「海外M&Aの実行力」「グローバル経営力」を挙げている。
「M&A戦略ストーリーの構想力」では、中長期の時間軸で自社の目指すべき姿を明確に描き、そこから成長戦略を立てて、なぜ海外M&Aが必要なのか十分に検討することが重要とする。経営者は自らが「ストーリーテラー」として、その戦略を内外に発信することで、買収関係者間でビジョンが共有でき、理解を得られる。
「海外M&Aの実行力」では、成長戦略を判断軸として、平時から海外M&Aを検討し準備しておくことが、M&A買収にまつわる各プロセスの実効性を高めるとする。
「グローバル経営力」では、海外M&Aの実行をグローバル経営のスタートと捉える。グローバルに通用する価値観や行動規範を作成し、買収した企業の優秀な人材を登用するなど、買収を通じて企業が真のグローバルカンパニーに進化可能な体制へと変革していくことがポイントとなる。なお、これら3つの要素全体に対して、経営トップは主体的に関与し、リーダーシップを発揮する必要があるとしている。
「海外M&Aを経営に活用する9つの行動」は、報告書の中から特に経営トップが留意すべき点をまとめたものだ。
まず、M&A前の段階では、行動1「『目指すべき姿』と実現ストーリーの明確化」、行動2「『成長戦略・ストーリー』の共有・浸透」、行動3「入念な準備に『時間をかける』」を挙げている。
実行段階では、行動4「買収ありきでない成長のための判断軸」がポイントとなり、統合プロセス(PMI)では行動5「統合に向け買収成立から直ちに行動に着手」、行動6「買収先の『見える化』の徹底」、行動7「自社の強み・哲学を伝える努力」が挙がっている。
さらにPMI後の段階では、行動8「海外M&Aによる自己変革とグローバル経営力強化」、行動9「過去の経験の蓄積による『海外M&A巧者』へ」が、次のM&Aへ向けた準備につながるとしている。
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