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「ものづくり白書」先進事例に見る、日本の製造業が飛躍するためのカギものづくり白書2017を読み解く(後編)(1/3 ページ)

日本のモノづくりの現状を示す「ものづくり白書」では、日本の製造業独自の強みを示すとともに、固有の弱みがあることを明らかにしている。本稿ではモノづくり産業が直面する課題や今後の展望について、実際の事例を踏まえながら紹介する。

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≫前編はこちら

 2017年6月に公開された「平成28年度 ものづくり基盤技術の振興施策」(以下、2017年版ものづくり白書)を読み解く本連載。前編の「ものづくり白書に見る、日本の製造業の強みと弱み」では、日本の製造業の持つ固有の強みと、海外企業に対する弱みなどについて紹介したが、後編となる今回は先進事例を中心とし成功のカギとなる点について紹介する。

最新のデジタル技術はあくまで「ツール」

 「2017年版ものづくり白書」によると、IoT(モノのインターネット)をはじめとした第4次産業革命に関連した最新のデジタル技術はあくまで「ツール」であり、最終的な目的とは「顧客の課題を解決する」こと、「顧客に最適なソリューションを効果的・効率的に届ける」ことにあり、そのために自らの能力を高めるための取り組みが重要であるとしている。

 また、顧客のニーズ対応、課題解決を図る「ソリューション」起点で物事を考え、その実現手段としてIoT、ビッグデータやAI(人工知能)などのデジタル技術を積極的に活用していくアプローチであり、技術導入を行うこと自体が目的化しないことであると論じている。

 さらに、最新のデジタル技術によるソリューションは、研究開発、製品設計、生産、保守などの「エンジニアリングチェーン」と、受発注、生産管理、生産、流通・販売、アフターサービスなどの「サプライチェーン」の双方において、各所で使われる。双方のチェーンにおいてデジタルツールを用いたデータの利活用の拡大や迅速化を進めることで、生産性の向上や新たな付加価値の創出の実現を図ることが必要だと述べている。

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図1:想定し得るソリューション例とその位置付け(クリックで拡大)出典:2017年版ものづくり白書

 第4次産業革命は、データの利活用を1つの特徴としており、そうした観点から産業を大別すると、1つの考え方として「エンドユーザーとの距離(サプライチェーン上で占める位置関係)」や「データ取得対象の物性(生産プロセス)」により分類することが可能となる。2017年版ものづくり白書では以下の4つの分類を行っている。

  1. 最終製品:自動車、電気機器、航空機、日用品、食料品、医薬品・化粧品など
  2. 部品・部材:輸送用機械部品、電子部品、金属製品など
  3. 素材:化学、石油製品、鉄鋼、非鉄金属、窯業、パルプ・紙、繊維など
  4. 設備:産業機械など

 それぞれの特徴と先進事例を紹介していく。

最終製品メーカーにおける第4次産業革命

 最終製品における第4次産業革命による特徴は、エンドユーザーに近く製品にセンサーやデバイスの組み込みが容易であることから、「予知保全」「遠隔保守」「運用最適化」などを行いやすいという点である。また、組み込みソフトの更新による製品自体の更新も可能で、エンドユーザーと常時コンタクトを取るビジネスモデルを組み立てやすい。これらを生かし、モノの利用によるサービスソリューション展開を行いやすいポジションにある。

 一方で、顧客ニーズが短期サイクルで変化し多様化していく中で、多品種少量生産をリアルタイムに近い形で実現することが求められている。これらがスマートファクトリー化へのニーズなどを生み出している。併せて、設計領域でもモデルベース開発の活用など、デジタルツールの最大限の活用などが進んでいる。

事例:マツダ(自動車メーカー)

 自動車メーカーではエンジニアリングチェーンの、車両システムの複雑化が進む中、シミュレーションで再現し開発・検証を行う「モデルベース開発」が不可欠になっている。これにより、手戻りや試作回数の大幅削減を推進。また、サプライチェーン全体での開発を効率化するためには、企業を超えてOEMやサプライヤーが実施するための「標準的なモデル」が必要になっている。

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図2:モデルベース開発(クリックで拡大)出典:2017年版ものづくり白書

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