iPS、ES細胞の培地コストを最大10分の1に低減、従来の培地と機能は同等:医療技術ニュース
京都大学は、多能性幹細胞を培養するための新しい安価な合成培地と、その培地を用いた培養方法を開発した。この合成培地には人工的に合成した化合物を用いており、成長因子を必要としない。
京都大学は2018年3月6日、多能性幹細胞(iPS細胞やES細胞)を培養するための新しい安価な合成培地(培養液)と、その培地を用いた培養方法を開発したと発表した。この研究は、同大学高等研究院物質−細胞統合システム拠点 特定拠点講師の長谷川光一氏らの研究グループによるものだ。
多能性幹細胞の作製や利用には大量の培地が必要だが、研究用で1l(リットル)当たり5〜7万円程度、臨床用で1l当たり9〜13万円程度と高価だ。特に培地の成分の中でも「成長因子」というタンパク質は、少なくとも2種が必須となるが、培養細胞や大腸菌に作らせて精製しなければならず、高価な成分となっている。この培地の高価さが、iPS細胞を利用した研究や創薬、臨床利用のコス卜を上げる一因であり、安価な培地と培養方法の開発が求められていた。
今回、同研究グループは、化合物を用いることで成長因子を必要としない合成培地を開発した。これまで必須とされてきた成長因子を直接置き換えるのではなく、多能性幹細胞を増殖させることができる化合物「1-Azakenpaullone」、分化を抑える化合物「ID-8」、増殖を加速させる化合物「Tacrolimus」を見つけ、これらを組み合わせた。この合成培地の材料費は、1l当たり8000円程度であり、他の培地に比べ5分の1から10分の1のコス卜で作製できる。
また、この培地を用いた培養法も開発。これにより、複数の多能性幹細胞を長期に拡大培養できること、皮膚細胞や血液細胞からiPS細胞を作製可能なことが確認できた。これらのことから、この合成培地が、他の培地と同等の機能を持っていると示された。
これらの成果により、iPS細胞を利用した研究や創薬、医療応用のコス卜が大きく削減されることなどが期待できるという。今後は実用化を目指し、医療応用に向けての安全性の確認や、市販化に向けた耐久性の確認などを行う必要があるとしている。
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