二次電池各社の進む道、それぞれの先進技術と抱える課題:モノづくり最前線レポート(2/2 ページ)
「第9回 国際二次電池展」の基調講演では、マクセルホールディングス、BYD、CATL、Teslaなど、日米中の二次電池関連各社が登壇。先進技術動向と抱える課題などについて説明した。
レアメタル対策を急ぐBYD
携帯電話機向けや電気自動車(EV)向けのリチウムイオン電池を生産する中国のBYDからは、BYD Solar Managing DirectorのTom Zhao(トム・ジャオ)氏が登壇。LFP(リン酸鉄リチウム)、NMC(ニッケル-マンガン-コバルト)など各種リチウムイオン電池の需要動向やエネルギー密度のロードマップを紹介した。
リチウムイオン電池の需要は、EVが需要をけん引し、2030年には全体で2300GWh(ギガワット時)を越え、現在の6倍となる見込みだという。その中で懸念されているのが、材料供給面の不足である。
既に需要が高まっているコバルト(Co)の供給が逼迫しており、2021年には足りなくなる恐れがあるという。コバルトの不足は将来の電気自動車の動きに大きく関わってくる。現在、コバルトの価格は、1年間に3倍に高騰しており、さらに今後は価格上昇ペースがさらに上がると見られている。コバルトの埋蔵量は限られており、こうした動きはNMCバッテリーの10%の価格上昇につながるという。
「コバルトの高騰は大きな問題であり、それに対して当社は独自の戦略でリスクの緩和に取り組んでいる」(ジャオ氏)。技術面では、NMCバッテリーでエネルギー密度を上げて、コバルトの使用量を減らす取り組みを進めている。「将来的にはニッケルの割合を90%に上げて、コバルトは0.5%にまで減らすという考えがある。これによりコストの影響を抑える」(ジャオ氏)。
また、これだけでは十分でないことから、他の戦略も検討している。その1つが、リサイクルである。2025年には一部の電気自動車用のバッテリーが、市場から25GWh分戻ってくるといわれており、その再生プロセスを今後構築する考えである。
全固体電池に可能性を見るCATL
中国の電池メーカーであるCATLは、電気自動車やエネルギー貯蔵システム関連のリチウムイオン電池やバッテリーマネジメントシステム(BMS)の製造を行っている。同社はリチウムイオン電池の生産能力を急拡大しているが、2018年は日本でオフィスを開設する予定だという。
CATLのDean of Research InstituteであるChengdu Liang(チェンズ・リアン)氏は「最先端研究開発の技術を培うことで蓄電関連の技術を追求していきたい。また、マテリアルとセルテクノロジーに関しては、より最新の材料特性を持つ技術を確立するつもりだ」とリアン氏は述べている。
製品ではバッテリーセルに注力。セルの設計に関しては材料設計を原子レベルで行っており正しい材料を選択するところから開始する。その他、最初から材料のリサイクルを考えて、材料を選定している。セルデザインについても、エネルギー密度、パワー、価格のバランスを考えて設計を行う。加えて安全性と信頼性を重要視した取り組みを進めている。セル技術の未来については「自動車などを考えた場合、全固体化へと進むと見ている。液体も当面は進展するが、全固体にアドバンテージがある」と考えを述べている。
エネルギー関連企業へとシフトするテスラ
テスラのHead of Sales Engineering APACのJosef Tadich(ジョセフ・タディッチ)氏は、再生可能エネルギーを中心とした持続可能エネルギー社会への取り組みを強化する同社の方針について紹介した。
同社では太陽光発電事業として家庭向けでは屋根と一体化したソーラーである「ソーラールーフ」、家庭用蓄電池「パワーウォール」などを販売している。さらに、同社では太陽光発電に関しては2000件以上のメガソーラーの実績を持つ。蓄電システムも300以上の実績があり、それらは18カ国に広がっている。
これらを支える存在の1つとなっているのが2014年からスタートしたギガファクトリーである。ギガファクトリーでは、さまざまなテスラ関連製品のバッテリーを製造している。同社では、リチウムイオン電池のセルをベースとしてさまざまな製品開発を進めており、このセルをバッテリーパック、さらにバッテリーモジュールとして製品化し、自動車に搭載するという流れとなっているという。
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