パナソニックの公共システム事業を形作る「1件名1仕様」と「逆T字型モノづくり」:モノづくり最前線レポート(2/2 ページ)
国内の官公庁や法人向けにシステムソリューションを展開するパナソニック システムソリューションズ ジャパン(PSSJ)の公共システムセンターでは、公共市場向けのインフラシステム事業を扱っている。事業の特徴は、「1件名1仕様」と「逆T字型モノづくり」だ。
一度組み上げたものをばらす?
公共システムセンターの主力事業の1つがETCである。一言でETCと言っても、ETCゲートに車両が入ってくるのを検知する車両検知器や、車両内のETC車載器とDSRC通信を行うアンテナ、「ETC」などの表示が出ているトールゲート表示板、料金支払いを確認したらゲートの外に車両を送り出す発進制御機(開閉バー)、各種装置の制御や料金計算を行う車線サーバ、中央装置とのデータのやりとりを行う料金所サーバなどから構成されている。
逆T字型モノづくりの縦方向となる、パナソニックの強みを生かす自社内製品は、車両区分を検知するための赤外線センサーや、ミスなくDSRC通信を行うためのアンテナ、そして車線サーバや料金所サーバになる。佐江戸事業所では、これら自社製品と他社買い入れ品を組み合わせたシステムアップとシステムテスト、顧客の立会検査を行っている。その上で、「佐江戸事業所内でシステムアップしたものをいったんばらして、施工現場まで運び、再度組み上げる。その際にもきちんと動作することを保証しなければならない」(伊藤氏)という。
もう1つの主力事業である防災行政無線は、自治体の役所に設置される操作卓や基地局無線装置、中継局、子局や戸別受信機などから構成される。ETCと比べると、無線関連がシステムの中核となるため自社製品が多めだ。余談だが、戸別受信機については、映画「君の名は。」に登場したことでも話題になった。伊藤氏は「最近では、インターネットを介した複数メディアとの連携も重要になっており、オプションとして対応している」と述べている。
公共システムセンターにおける「1件名1仕様」や「逆T字型モノづくり」といったノウハウは、「モノ売り」から「コト売り」へのシフトを目指すパナソニックにとって参考にすべきところは多い。自社内にこういった事業を持ち続けていることが、今後のパナソニックの強みになるのかもしれない。
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