歯科のインプラント治療で使用可能な人工骨、歯の無機成分と同じ組成:医療機器ニュース
九州大学とジーシーは、骨の無機成分と同組成の人工骨を開発し、歯科用インプラント治療で使用可能な人工骨として国内初の薬事承認を得た。これにより治療時の患者への侵襲を伴う自家骨採取が不要になる。
九州大学は2018年2月15日、骨の無機成分(低結晶性炭酸アパタイト)と同組成の人工骨「ジーシー サイトランス グラニュール」を開発したと発表した。また、同製品が歯科用インプラントの治療で使用可能な人工骨として、国内初の薬事承認を得たという。
同製品は、同大学大学院 歯学研究院 教授の石川邦夫氏らの研究成果をもとに、歯科材料や関連機器を製造、販売するジーシーが実用化したものだ。石川氏らは骨の無機成分を分析し、骨の無機成分がハイドロキシアパタイトのリン酸基の一部が炭酸基に置換された炭酸アパタイトであることを確認した。
炭酸アパタイトは、粉末の状態では体内に移植した際に炎症を起こすため、臨床応用できないという問題があった。今回の研究では、炭酸アパタイトが熱力学的に安定相であることを利用し、ブロックや顆粒状の炭酸カルシウムを溶解析出反応によって組成変換することで、形状を保持したまま炭酸アパタイトに変換させることに成功した。つまり、炭酸アパタイトのブロックや顆粒を完全に人工合成する方法を世界で初めて開発した。
さらに、国内の3医療機関で治験を実施し、炭酸アパタイト顆粒の医療機器としての有効性および安全性を実証。骨の無機成分と同組成である炭酸アパタイト顆粒が、生体内で骨に置換可能であることを確認した。
これまで、骨の再建術や歯科用インプラント治療では、患者本人の骨(自家骨)を使用せざるを得なかった。同製品が人工骨として薬事承認されたことにより、患者への侵襲を伴う自家骨採取が不要になる。今後、骨が不足しているために歯科用インプラント治療が受けられなかった患者への適応拡大が期待される。
治験による検証結果。左:術後7カ月のCT画像。材料の骨置換が進んでいる。中央:術前と術後7カ月の骨の厚さの平均値推移。右:術後8カ月の骨生検の病理組織像。炭酸アパタイト顆粒(白色)の周囲に隙間なく新しくできた骨(緑色)や類骨(赤色)が形成されている。(クリックで拡大) 出典:九州大学
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