バイオケミカルセンサーチップを開発、微量の液体から特定の溶質を高感度に検出:医療機器ニュース
大阪大学は、レーザー光の照射により非線形光学結晶から発生するテラヘルツ波を用いて、極微量の溶液中の溶質濃度を高感度かつ定量的に検出できる超高感度バイオケミカルセンサーチップを開発した。
大阪大学は2018年2月14日、同大学レーザー科学研究所 特任研究員の芹田和則氏らの研究グループが、レーザー光を照射することで非線形光学結晶から発生するテラヘルツ波を用いて、極微量の溶液中の溶質濃度を高感度かつ定量的に検出できる超高感度バイオケミカルセンサーチップを開発したと発表した。
開発成果により、ガンや糖尿病などの早期発見、迅速かつ簡易なインフルエンザウイルスの検出、生きた細胞の非破壊評価など幅広く貢献することが期待されている。
周波数が1T(テラ)Hz前後にあるテラヘルツ波のエネルギーは、生体関連分子の微弱な振動や回転に相当することから、生命機能に関わる情報を抽出できる電磁波として次世代のバイオセンシングへの応用が期待されている。しかし、これまでは波長(0.01〜1mm程度)のテラヘルツ波をレンズで1〜2mmほどの領域に集光してテラヘルツ計測する場合が多く、これより小さなサンプルの測定が難しかった。また、テラヘルツ波には水に対する高い吸収特性があるため、高感度かつ定量測定も難しかった。
今回、同研究グループは、非線形光学結晶へフェムト秒(1フェムト秒は10-15秒)パルスレーザー光を照射した際に、局所的にテラヘルツ波が発生することに注目した。ここで発生するテラヘルツ波は、その波長よりも数桁小さい領域に集束した点光源であり、数アレイのメタマテリアル(対象とする電磁波の波長よりも小さな微細構造体)でも顕著な共鳴応答を示すことが分かった。
そこで、非線形光学結晶を下地基板としてマイクロ流路と数アレイのメタマテリアルを有するチップを開発。結晶下部からレーザー光を照射させることで、テラヘルツ波が生成される。その結果、テラヘルツ波と流路内溶液を直接相互作用させることで、微量溶液の高感度かつ定量測定に成功した。具体的には、実量318ピコリットルのミネラルウオーター中に存在するイオン濃度を、最大で31.8フェムトモルの感度で検出できた。これは従来技術と比較して、約100分の1以下の溶液量で1000倍以上の検出感度となっている。
同成果により、蛍光標識を使わずに、極微量でさまざまな生体関連溶液の評価が実施できるようになることが期待される。血液や尿などにわずかに存在するバイオマーカー、インフルエンザウイルス、血中グルコース、DNAなどを検出可能になれば、ガンや糖尿病の早期発見や臨床現場での迅速な病理診断につながる。また、生きた細胞の生育や化学反応・酵素反応などの非破壊かつリアルタイム観察など、医療・バイオ分野での幅広い波及効果が期待される。チップ自体も安価でコンパクトにできる可能性があるという。
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