世界最大の産業展示会に82社の日本企業が参加、日本版モノづくりを訴求:FAニュース(2/2 ページ)
日本能率協会 ドイツメッセ日本代表部は、2018年4月23〜27日にドイツのハノーバーで開催される産業技術の展示会「ハノーバーメッセ2018」の開催概要とともに、日本企業の出展状況やジャパンパビリオンの内容などを紹介した。
中小企業のためのIoTを訴えるi Smart Technologies
ジャパンパビリオン内に出展するi Smart Technologiesはハノーバーメッセとしても初出展となる。同社の母体は自動車部品を製造する中堅メーカー旭鉄工だが、社内で低価格な生産見える化ツールを開発して生産能力を大幅に向上。そのシステムをパッケージ化して外部提供を開始したところ、多くの引き合いをもらったことから、i Smart Technologiesを発足し本格販売を開始した。現在では中小企業を中心に既に80社以上の導入実績を抱えているという※)。
※)関連記事:IoTは町工場でも成果が出せる、市販品を次々に活用する旭鉄工の事例
i Smart Technologies 代表取締役社長 CEOの木村哲也氏は「事前準備は3時間ほどかかるが、その後最短6分で生産見える化を実現可能だ。その短時間での導入で、自社内では最大128%、顧客企業では最大で58%の生産性改善を実現した実績がある。さらに顧客の4分の3が中小企業である。ドイツでも中小製造業のIoT化は苦戦していると聞く。海外はタイでの実績があるが欧州やその他市場での足掛かりを作りたい」と述べている。
日本のモノづくりの「品質」を訴えるアビームコンサルティング
同じくジャパンパビリオン内に出展するアビームコンサルティングは、日本の製造業向けで実績のある製造業IoTのデータソリューション「IoT Data-Driven Manufacturing Solution」をアピールする。ハノーバーメッセ会場では、工場を模した小型の装置を用意し、そこから吸い上げたデータを基に、工場内のデータ活用の意味を訴えるとしている。
アビームコンサルティング IoTセクター デジタルトランスフォーメーションビジネスユニット ディレクターの橘知志氏は「ミニチュアファクトリーでデータをどう活用するかをアピールしたい。日本のモノづくりの強みを生かしたデータソリューションの価値を訴えたい」と述べている。具体的には「品質」工場に直結するデータ活用などを訴求するとしている。
小型・可搬式のダブルチャンバー方式測定器を訴える東海エレクトロニクス
名古屋市の技術商社である東海エレクトロニクスは、山洋電気が開発した小型のエアーフローテスターによる可搬式のダブルチャンバー方式測定器の価値を訴える。従来の主流だった大型のダブルチャンバー方式測定器と異なり、小型で低価格であることから今までにない新しい用途の開発を推進する。シミュレーションソフトなども組み合わせ、ファン設計の最適化などを訴求する。既に国内ではさまざまな用途で利用されているが、海外でも用途開拓を進めていく方針だ。
東海エレクトロニクス マーケティング本部 Eセグメント推進部 部長 IoT・FAプロジェクトリーダーの坪井誠治氏は「従来見えなかった領域を見える化する意義は日本でも欧州でも変わらない。訴えられる価値があると考えている」と述べている。
ホログラムによる外観検査を訴えるマクシスエンジニアリング
名古屋市のエンジニアリング企業であるマクシスエンジニアリングは、ホログラム技術による外観検査技術を訴求する。塗装やコーティングの表面上のキズなどは従来は人による目視で行う場合が多かったが、ホログラム技術を用いた特殊な照明により、微細なキズや塗装不良を簡単に観察できるようにし、ロボットなどを組み合わせて自動化を可能とする。欧州各国の部品製造メーカーや完成品メーカーの目視外観検査工程への導入を目指すとしている。
マクシスエンジニアリング 装置部 開発室 グループリーダーの西郷知泰氏は「外観検査工程を簡素化するということに加えて、今まで人手が必要だった領域を自動化できるという点に意味がある。データがつながっていなかった領域をデジタル化できる」と技術の価値について述べている。
安全・簡単にネットワーク接続する新技術を訴えるミツイワ
技術商社のミツイワは、RRIの製造ビジネス変革WG(WG1)のサブWG「スマート工場構築を支援する新しいネットワーク技術の実用化検討サブWG」で、コネクトフリーなどと共同で取り組む工場内の安全で簡単なネットワークプロトコルを訴求する。ハードウェアレベルでマシンを分離するセキュリティ技術「LinuxSecure」と新たなネットワーク技術「EVER/IP」を組み合わせたデータダイオードIoTゲートウェイを展示する。
ミツイワ マーケティング本部 セキュリティビジネス推進部 部長代理の稲葉善典氏は「工場内の機器はつながっていないものが多いが、ネットワークにつなげるとリスクもコストもどちらも上がる。こうした現状を変えるために、新しい技術で安全・簡単につながる手法を目指して開発した。同様のニーズは欧州でもあると見ている」と語る。
金型センシングとAIによるデータ活用の価値を訴えたIBUKI/LIGHTz
AI(人工知能)ベンチャーであるLIGHTzと、山形県の金型加工業であるIBUKIは、同じO2グループに所属し、AIを生かしたモノづくりについて研究開発を進めている。その取り組みの1つとして、熟練技能者の思考を汎知化し次世代につなぐAI「ORGENIUS」をハノーバーメッセで出展する。LIGHTzとIBUKIでは「熟練者の知見を取り入れたIoT、金型の息づかい可視化プロジェクト」を推進しており、金型のセンシングによる射出成形機での成形などを対象に、熟練者のノウハウを言語化し教師データに教え込むことで知見や思考様式を活用できるようにする。
LIGHTz 代表取締役社長の乙部信吾氏は「射出成形の領域では熟練者の思考をかなり高度にトレースすることができるようになっている。既に国内では三菱自動車などで実証の動きもあり、今後2020年頃の一般販売を目指して欧州でも存在をアピールしていきたい」と述べている。
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