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コマツとランドログの事例に見る「デザイン思考」の実践いまさら聞けないデザイン思考入門(後編)(3/3 ページ)

前編では、デザイン思考が求められている理由、デザイン思考の歴史、デザイン思考と従来型の思考との違いについて解説した。後編では、デザイン思考を実践するにあたり、押さえておきたいプロセスやその手法を、コマツが直面した課題やランドログのアプローチを中心に紹介していく。

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組織横断的なランドログが誕生した理由

 先の「自動車専用道路の路床工事」でいえば、建設現場を横断的に捉え、全体的な課題解決を実現できる組織が必要になってくる。しかし、自社の建機を重視するコマツの社内で、そういった組織を立ち上げ、何の抵抗もなく実践することは容易ではない。

 そこで3つの「P」のうち、建設生産プロセスにおける課題を解決するためのサービスを提供することを目的とする「Place」として設立されたのが、筆者が所属するランドログである。コマツが出資していることもあり、コマツの建設現場向けIoT(モノのインターネット)プラットフォームというイメージがあるかもしれないが、ランドログが目指しているのは、デザイン思考に基づいた建設現場の課題解決に他ならない。だからこそ、NTTドコモ、SAPジャパン、オプティムも出資する組織横断的な企業となっているのだ。

 前編でも紹介した通り、SAPは、共同創業者であるハッソ・プラットナー(Hasso Platner)氏が、SAPの外側の組織でデザイン思考を取り入れた製品を開発することにより、SAP本体にデザイン思考を注入することに成功した。つまり、「Place」となる外部組織での成果を「Process」によって水平展開したことになる。

 ランドログで得られる知見も、コマツや関係パートナー自体にデザイン思考を展開する「Process」の基になることを期待している。

ランドログによるデザイン思考型アプローチ
ランドログによるデザイン思考型アプローチ(クリックで拡大) 出典:ランドログ

 例えば、ランドログ上で既にリリースしている「TRUCK VISION」は、建設現場における物流のボトルネックを改善するためのアプリケーションだ。ダンプトラックの位置情報を一元的に可視化し、効率的かつ最適な運行を支援する。同アプリを利用すれば、ダンプトラックが来ない建設現場の物流ボトルネックが解消され、さらにはコマツの建機と連動しダンプトラックが満杯になるまで土を積むことができる(過積載を防ぐことができる)。コマツの建機のことだけを考えていても、TRUCK VISIONの目指す価値は実現できない。



 デザイン思考そのものは個人の活動にも役立てられるものだが、企業活動に取り込むには、企業の経営陣がデザイン思考の重要性を理解し、強靱なリーダーシップを発揮する必要がある。一介の社員が「組織変更!!」を声高に叫んでも実現することではない。

 まず、自社でデザイン思考を実践するには、先人の事例を参考にしてほしい。例えば、SAPでは米国カリフォルニア州パルアルトに「SAP Labs」を構えて、デザイン思考の実践に取り組んでいる。また、前編で紹介したスタンフォード大学のd.schoolはデザイン思考のさまざまなアイデアの宝庫となっている。国内であれば、慶應義塾大学大学院のシステムデザイン・マネジメント研究科や筆者の出身母体である早稲田大学大学院の経営デザイン専攻などでもデザイン思考を学べるカリキュラムが用意されている。ぜひ、参考にしてほしい。

プロフィール

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明石 宗一郎(あかし そういちろう)

アクセンチュア入社後、業務・ITコンサルタントとして官公庁、製造業、通信メディア、エンターテインメント業でプロジェクトリーダーを歴任。SAPジャパン入社後はソリューション統括本部にて主に製造業の顧客を担当、ソリューション提案やコンサルティング経験を持つ。2017年10月よりSAPジャパンからランドログに出向、同社のCDO(Chief Digital Officer)に就任。

ランドログ
https://www.landlog.info/

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