第4次産業革命が起こす価値の創造、新たな羅針盤は「デザイン志向」:製造マネジメント インタビュー(1/2 ページ)
第4次産業革命により製造業のビジネスモデルは大きく変化しようとしている。しかし、日本の製造業では技術論や工場内革新などで終始し、新たなビジネスモデル構築で苦戦する様子が見える。その中で急浮上しているのが「デザイン」の持つ力を見直す動きだ。経済産業省で「第4次産業革命クリエイティブ研究会」を推進する商務情報政策局 生活文化創造産業課 課長の西垣淳子氏に話を聞いた。
IoT(モノのインターネット)などICT(情報通信技術)を産業のあらゆる現場で使用することで産業構造を変革する第4次産業革命の動きが活発化している。製造業では、スマート工場などに代表される社内効率化を実現する動きと、先進技術を活用して「モノ売り」から「コト売り」への新たなビジネスモデル構築を図る2方向での動きが期待されている。しかし、日本企業においては、スマートファクトリーなどへの取り組みは活発だが、ビジネスモデル構築に向けては明確にイメージできていないケースは多い。
その中で新たなビジネスモデル構築を考える指標となりそうなのが「デザインの力」である。この「デザインの力」を軸とした新たなビジネス展開を支援する「第4次産業革命クリエイティブ研究会」は、2017年3月9日に成果報告会を開催する。同研究会を主宰する経済産業省 商務情報政策局 生活文化創造産業課(クリエイティブ産業課) 課長の西垣淳子氏に、同研究会が何を目指しているのか、「デザインの力」が製造業にどのような影響を与えるのかについて聞いた。
第4次産業革命のポイントは技術ではない
MONOist 「第4次産業革命クリエイティブ研究会」の目的を教えてください。
西垣氏 第4次産業革命はIoT(モノのインターネット)をはじめとするICT(情報通信技術)が基盤となっているが、本来的にはこうした個々の技術での話ではない。個々の技術だけを取れば既に商用化されていたり実用化されていたりするものが多い。最大のポイントはこれらを使って新たな価値やビジネスを生み出すということにある。
例えば、新たなビジネスモデルとして注目されているUBERやAirbnbなどを見ても、新しい技術によって新しいビジネスを実現しているわけではない。既にある技術を最適に組み合わせてユーザーに対する価値を実現する発想があってこそ、新たなビジネスモデルが生み出せる。こうした全体像を描く力が「デザイン」であると考えている。日本企業にとっての課題は技術力ではなく、こうしたデザイン力にあると考える。これを解決すべく設立したのが「第4次産業革命クリエイティブ研究会」である。
そもそも日本の製造業は「デザイン」を非常に狭い範囲で解釈しがちだ。デザインといえば、まず製品のスタイルや意匠などを指すがこれは「狭義のデザイン」である。さらに製品やサービス全体の設計を捉える「広義のデザイン」がある。製造業で一般的にデザインといえば、この範囲までを考えることが多い。
ただ、先ほどの例で考えても単体の製品だけで顧客価値が成立しないことが増えてきており、製品やサービス提供プロセス全体を設計する能力が求められている。これを「発展的なデザイン」と定義する。さらにこうしたデザインをベースに組織設計などを行うデザインマネジメントなども存在する。第4次産業革命クリエイティブ研究会ではこの「発展的なデザイン」までを「高度デザイン人材」とし、この高度デザイン人材を育成する仕組みを検討している。さらに、これらの高度デザイン人材を使いこなす企業経営者への啓蒙を進めることを目的としている。
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