いまこそ“メカジョ”を経営戦略に、国家GDPを8%引き上げる女性の力:モノづくり、女性の力(2/2 ページ)
モノづくり現場において女性の力を効果的に生かしていくためには何が必要となるだろうか――。オートメーションと計測の先端技術総合展「SCF2017/計測展2017 TOKYO」では、「モノづくりの最前線で輝く女性たち」をテーマに日本機械学会会長の大島まり氏が講演した。
多様な問題解決に必要な女性の力
講演終了後には、「工学分野における女性の活躍促進に向けて」をテーマとしたパネルディスカッションを実施した。パネリストとして大島氏をはじめ日本機械学会 LAJ委員会 委員長の山西洋子氏(現九州大学教授、針なし気泡注射器やプラズマ誘起気泡の研究などを実施)、小松製作所(コマツ)開発本部 業務規制・標準グループ 主査の岡ゆかり氏(鉱山機械・建設機械の衝突安全の国際規格作りなどに取り組んでいる)の3人が参加。モデレーターは、日立製作所 研究開発グループ ユニットリーダ 主任研究員の山崎美稀氏(モーターや変圧器関連の開発などに携わる)が担当した。
この中で大島氏は、工学分野で女性が活躍するための課題として「大学で女性教員が少ないところには女子学生も集まりにくく、受験者も少なくなるという悪循環がある。これを断つためには、何らかの取り組みで女性の数を増やしていくことが重要だ。そこには、男性も含めて働きやすい環境を整備することや、男性の働き方の多様性も必要となる」と述べた。
教育現場、研究現場における女性の活躍についてもまだまだ課題が多いとされているが、LAJ委員会の山西氏は「機械工学部などを選んだ女子学生は、問題意識の高い人が多い。工学系を選ぶ女性ははっきり意見も持っているが、一方で自分の将来に不安も持っている。そのため優秀な女性人材を獲得するためには、企業など現場からのからの情報提供が重要だと考える。また、子育てが終わってから研究職に戻りたいと考える人たちも多く、こうした人たちが再雇用できるような施策なども必要だ。企業との協力でまだまだ活躍できる場は増える」と要望した。
教育現場での状況に対し、企業のモノづくり現場での女性活躍についてはどのような課題があるのだろうか。コマツの岡氏は「女性に限らず日本社会全体で雇用の流動性があれば、もっと自由に、自分に合ったライフスタイルを選ぶことができる」と再選択の可能性を広げることが女性の活躍にもつながると指摘する。
さらに、企業としては「例えば工事現場で女性用トイレを増やすなど女性が働きやすいような環境を提供するなど、物理的に働きやすさを実現する細かな積み上げが必要だ。こうした取り組みを重ねることが最終的には実を結んでいくのではないか」と意見を述べた。
現状では日本は世界的に見ても女性が働きやすいとは言えない環境であることが指摘されている。しかし、生産年齢人口減少の中で経済的な豊かさを維持していくためには、より多様な人材活用が必須なのは明白である。日立製作所の山崎氏は「女性はいろいろなことを同時に考えることが得意であり、社会が複合的で多様化する中で、問題を抱えながらさまざまなことを仕切っていくのは女性に向いている。現状では課題がたくさんあることは事実だが、企業も教育現場も少しずつ前進している。これから女性がどんどん活躍できる時代が来ることを期待したい」と結んだ。
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