車載用ソーラーパネルだけでEVを走らせるには? NEDOがコストメリットを試算:電気自動車
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は「太陽光発電システム搭載自動車検討委員会」の中間報告書を公表した。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2018年1月31日、自動車への太陽光発電システムの搭載を検討する「太陽光発電システム搭載自動車検討委員会」の中間報告書を公表した。
同委員会の委員長は豊田工業大学 スマートエネルギー技術研究センター シニア研究スカラの山口真史氏で、トヨタ自動車 未来創生センター未来研究部や日産自動車のEVシステム研究所、シャープ エネルギーシステムソリューション事業本部からも委員として参加している。
中間報告書によれば、電気自動車(EV)に太陽光発電システムを搭載した場合の付加価値は、ユーザーは年間で最大1万4200円のメリットが見込め、1台当たりのCO2排出量削減効果は240kg-CO2となる試算だ。使用頻度や走行距離によって経済効果やCO2排出量削減の効果はばらつきがあり、街乗りや短距離利用では太陽光発電システムを搭載するメリットは弱くなる。
車載用では変換効率30%以上が必要に
各国の排出ガス規制に対応するため、自動車メーカー各社がEVやプラグインハイブリッド車(PHEV)を投入する計画を公表している。EVやPHEVは、規制をクリアするだけでなく世界各国に課された温室効果ガス排出削減目標への貢献も期待される。しかし、EVやPHEVを充電する電力が再生可能エネルギー由来でなければ、電動車を普及させることによる効果は限定的となるとNEDOは考え、自動車への太陽光発電システムの搭載を検討し始めた。
太陽光発電システムを搭載することによるCO2排出の削減効果は、太陽電池製造に伴うCO2排出を織り込んで算出した。また、経済効果は電力会社から購入する電力の減少と電気料金の削減をメリットとし、車両に太陽光発電システムを搭載するコストと合算して評価した。
充電コネクターを接続して行う充電の回数については、太陽光発電システムを搭載することで回数を減らすことが可能で、頻度や走行距離など使い方によっては1年間に1度も充電しないこともできるとしている。
また、太陽光発電システムで発電した電力を全て使いきり、系統電力からの充電が不要となる太陽電池容量は、さまざまな使い方を想定して1kW程度が必要となる。自動車の限られた面積でこの容量の太陽電池を搭載するには、変換効率30%以上の高効率タイプが必須だとしている。
太陽光電池を車両に搭載する付加価値の試算で前提とした条件は以下の通り。
太陽電池 | 出力 | 1.0kW |
---|---|---|
モジュール効率 | 31% | |
搭載面積 | 3.23m2 | |
価格 | 12万円/kW | |
EV | 電費 | 12.5km/kWh |
電池容量 | 40kWh | |
PHEV | 電費 | 10km/kWh |
電池容量 | 10kWh | |
CO2排出係数 | 太陽光発電 | 0.99kg-CO2/kWh |
系統電力 | 0.35kg-CO2/kWh | |
ガソリン | 2.322kg-CO2/l | |
電力単価 | 25.5円/kWh | |
ガソリン小売り単価 | 133円/l |
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