IoT時代のキーテクノロジー「自律分散システム」とは何か:製造業IoT(2/2 ページ)
IoTの活用が進展する中、注目を集めているのが「自律分散システム」である。中央で全ての情報を処理するのではなく、エッジ(現場)側で個別に最適化することで柔軟でしなやかさを確保できる点が利点だとされる。鉄道や製鉄所などで多くの自律分散システム構築の実績を持つ日立製作所に自律分散システムの利点と価値について聞いた。
自律分散システムの仕組み
自律分散システムは、個々の装置のシステムは独立しており、制御系基幹ネットワーク上に、それぞれのシステム状況がどうなっているのかというのをリアルタイムで一方的に発信する仕組みを構築。協調が必要な場合にのみ、それぞれのシステムが発信されている情報を収集し、協調制御を行うという仕組みとなっている。個々のシステムは独立したシステムとして成立しているので、装置などの追加や撤廃などを行っても、それぞれのシステムは問題なく動作する。
「絶対に止められないインフラシステムなどでは最適なシステムだといえる。リアルタイム性や可用性を確保しつつ、システムの拡張性や柔軟性を実現できる」と西村氏は述べている。
日立製作所では、製鉄所での自律分散システムの構築後、鉄道や新幹線の運行管理制御などにも適用(※)。その後、プラント制御や工場のライン制御などにも応用を進めている。ソフトウェアシステムもUNIX、LINUX、Windowsなどの各種OSに対応し、広い分野で活用されているという。
(※)関連記事:IoT実現のヒント、新幹線延伸のシステム構築はどのように成し遂げたか
「個々の作業が均質ではなく、常に変化があるというような環境では、自律分散システムの利点が生きる。そういう意味では、変化が大きく、拡張性なども必要となるIoTに関するシステムとしては最適だと考えている」と西村氏は述べている。
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