「Node-RED」がつなげるWeb系エンジニアとIoT:IoT観測所(41)(3/3 ページ)
IoTソリューションの開発に用いられているフローベースの開発環境「Node-RED」。IBMによって生み出された後、2016年10月にLinux Foundationに移管されてから、一気に普及が進んでいる。
約2000個のライブラリを提供
ちなみに、Node-RED Libraryには原稿執筆時点で2000あまり(Nodesが1300個ほど、Flowが760個強)のコンポーネントが登録されている。これらの中には、メーカーから提供されているものも少なくない。例えば、node-red-contrib-tplink-smarthomeは、最近国内でもルーターなどで名前が売れてきた中国のTP-LINKが提供するスマートホーム機器用のAPIを制御するためのNodeだ。これを使えば、TP-LINKの機器の状態をNode-REDでハンドリングできるようになる。似たようなものはたくさん用意されており、こうしたものの組み合わせで迅速にアプリケーションを構築できる、というのが強みとされる。
さて、このNode-RED、当初はIBMのBluemix用のツールと見なされていた部分もあって、あまり広く使われていたわけではない。しかし、2016年にJS Foundationに移管されるとともに、Bluemix以外のクラウドサービスでもサポートし始めたあたりから急に伸び始め、2017年に入って本格的にIoT向けとして普及し始めた感がある。
国内だと、例えば日立が2017年8月にこんなニュース(関連記事:ノンプログラミング開発環境でシステム間の連携を容易にする新技術を開発)を出している。また同年11月に開催された「ET2017」では、こちらの記事にもちょろっと書いたが、多くの企業か「IoT接続サービス」とか「簡単IoTソリューション」の類を提供しており、ざっと見た感じこれらの半分はNode-REDベースだったように思われる。
実は当初、組み込み系のエンジニアにはNode-REDはあまり好まれていなかったと思う。その理由は、組み込み向けというよりはWebサービスに近いレベルであり、IoTのエンドノードをMCUとかで頑張って構築しているエンジニアにとっては余りに無駄が多いというか、いうなればマジックハンド経由でスプーンをつかんでスープを飲むような感覚を覚えたのではないかと思う。
実のところ筆者も元がファーム屋に近いソフト屋さんだったから、第一印象はそんな感じだった。ただそうした従来の組み込み分野の開発環境は、クラウドサービスなどを使ってアプリケーションを作る昨今のWeb系エンジニアにはむしろ苦手というかなじみの無い世界であり、これこそがNode-REDが急速にIoT向けソリューションとして広がった理由だと筆者は考える。
つまりNode-REDは、Webサービス系のエンジニアがIoTソリューションを構築するための開発環境、と考えると一番しっくりくる。こうしたエンジニアにはJavaScriptは苦にならないし、Node.jsにも慣れている方が多い。ハードウェア周りは完全にカプセル化されているので、逆に細かいところまでいろいろいじろうとすると結構大変だと思うが、逆にそうしたことをしないで、簡単にセンサーのデータを取る類いの処理であれば、最小限のハードウェアの知識でプログラミングできる。
消費電力とかハードウェアコストなどに最適化されているとは言いがたいが、大体において現場の要求は、そうしたコストよりもソフトウェア構築コストを削減する方のニーズが多いわけで、「取りあえずIoTを構築する」という目的にはむしろ適切といえるかもしれない。Node-REDが急速に普及し始めている理由はこのあたりにあるのではないかと思う。
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