25年で生産効率8倍に、シーメンスが取り組むインダストリー4.0工場:スマートファクトリー(2/2 ページ)
「Embedded Technology 2017」「IoT Technology 2017」の基調講演にシーメンス(日本法人)代表取締役兼CEOの藤田研一氏が登壇。「IoT時代におけるシーメンスのデジタル事業戦略」をテーマに、インダストリー4.0や同社のIoTプラットフォーム「MindSphere」についての取り組みを紹介した。
シーメンスのIoT基盤「MindSphere」がもたらす価値
続いて、シーメンスが進めるデジタルビジネス戦略であるデジタル技術で実現する水平+垂直連携モデル(インダストリー4.0の目標)について紹介した。これは、基本技術であるIoT(モノのインターネット)、クラウド技術、3Dプリント技術、ナレッジオートメーション、先進ロボットがベースとなる。
製造業における生産活動においてメーカーはまず、製品設計を行い、次に製造準備(工場の新築やレイアウトなど)に取り組み、製造設備を設計(ロボットの配置など)して製造し、出荷後にサービスを実施するという一連の流れがある。これがバリューチェーンだが、通常これは日本の電機や自動車メーカーでは一気通貫に自社内および自社グループ内で行うのが、当たり前となっている。
しかし、ドイツではこれが一気通貫となっていない場合が多い。それは1分野の製品に強い中小企業があるためである。そのため、デジタルで全体をつなぐ必要があり、これが水平連携となる。垂直連携では、例えば製造準備で生産設備のロボットを発注した時、ここにもサプライチェーンが発生する。部品メーカーが収めた部品を製造設備メーカーがアセンブリし、完成品とし、このロボットをまた納めるという形となる。ここでも情報の交換があり個々にこれが垂直統合の世界となる。
1つが変わると全てが変わるというようなネットワーク化の時代では、水平連携および垂直連携が有機的に結び付くようにならなければならない。インダストリー4.0でドイツがやろうとしていることがこれであり「日本の産業界のように系列がないドイツの産業界ではデジタル技術でバーチャルな系列をつないでいくということが必要だった。これにより、サプライチェーンを構成する複数の企業群があたかも1つの企業のように連動してバリューチェーンが有機的に構成されるようになる」と藤田氏は指摘する。
シーメンス自体もこうした有機的構造を実現するために「MindSphere」というクラウドベースでオープンなIoTオペレーションシステムサービスを展開している。オイルアンドガス分野、発電、風力発電、送電、ビルディングテクノロジー、鉄道、自動車、インダストリー関連など独立した部門が、電化や自動化を進めた上で、この「MindSphere」を通じてサービス展開を進める計画である。例えば、工場や発電所、鉄道などからさまざまなデータをMindSphereにのせて、その後解析ソフトウェアなどのアプリを付け加えて顧客に提供するというサービスを行う。これが包括的なアプローチでデジタル化を推進するという背景となっている。こうした取り組みは、さまざまな企業との合併、共同などにより実現した。
さらに藤田氏は、インダストリー部門の取り組みとして、デジタルツインのコンセプトを紹介した。デジタルツインは製品設計、生産プロセス、生産設備など工場と製品に関係する物理的なモノ・コト・サービスを、デジタル(サイバー)上で、あたかも双子のように再現し、制御・管理することだ。
「工場の中での全ての作業をシミュレーションするようにするものだ。先に全てをシミュレーションして実態に落とし込む方が、時間やコストを削減につながる。また、そのバーチャルな取り組みを別の工場でも展開することができる」(藤田氏)とそのメリットを話した。このデジタルツインのコンセプトで用いて同社は製品開発を行っている。
このデジタルツインを可能にするシミュレーション技術には3D環境での製品開発シミュレーション、メカ・メカトロシステムの挙動のシミュレーション、空気流れ、伝熱、流体・気体シミュレーション、電子・電気システムシミュレーション、統合プラント建設ソフト、プラントプロセスシミュレーション、3Dプラント設計ソフトなどがある。
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