世界を席巻する黒船「MaaS」が本格上陸へ、日本の自動車業界に迫る決断の時:Future Mobility Summit 2017レポート(3/3 ページ)
ウーバー(Uber)に代表されるライドシェアやカーシェアは「MaaS(Mobility-as-a-Service)」として、世界各地で急激に市場を拡大している。日本でも、間もなくMaaSの本格導入が始まる可能性が高い。このMaaSに対して日本の自動車業界はどう対応するのか。決断の時が迫っている。
自動車メーカーの進む方向性は
SBドライブはフランス・ナビヤ(Navya)の、そしてNTTドコモはDeNAと提携しているフランス・イージーマイル(EasyMile)の自動運転シャトルバスを活用してMaaS市場に参入している。同様の車両では3Dプリンタで車体を作る米国のローカルモーターズ(Local Motors)なども参入している。OSVehicleも車体製造に3Dプリンタを活用している。
このように非自動車メーカーおよびその提携パートナーが着々とMaaSへの進出を進める中自動車メーカーはどのような対応をとっているのか。
これは各社の事業戦略により異なってくる。早々にカーシェア/ライドシェアビジネスに参入した自動車メーカーもあれば、カーシェアリング専用の自動車を展開している企業もいる。遅ればせながら同市場に参入しようとしている自動車メーカーもあれば、自動車メーカーであり続けることを選択したところもある。ベンチャー企業であっても、自動車を製造できるようになった現在においてメーカーであることをやめ、モビリティサービスプロバイダーになると宣言した自動車メーカーもある。
しかし「ビジネス化は難しいだろう」とSBドライブの佐治氏は指摘する。というのも「全体の輸送人員のうちシェアサービスが運んでいるのは1〜2%にすぎない」(同氏)からだ。ウーバーのようにアプリをばらまき顧客を囲い込むことができれば、顧客基盤を構築することができるが、仮に自動車メーカーが同様のアプリを作ったところで、ユーザーからダウンロードされるかというと別の話だ。また仮に海外で成功していたとしても、日本で同サービスが利用でされるかというと恐らく難しいだろう。よって、「サービスをユーザーに近い位置で展開している人が窓口になるのが良い」(同氏)とする。
一方、OSVehicleのLiu氏は、「自動車メーカーの助けなしに事業を立ち上げたカーシェア事業者は多数いる。トレンドが形成されつつある中で、自動車メーカーのような大手が迅速なイノベーションを起こすのは難しい。であれば、買収か投資を行うのが良い選択だろう。既に実施し始めている自動車メーカーもいる」と提言する。
欧州系メーカーは2010年前後からカーシェアやライドシェアのサービスを始めている。米国においても2015年頃から同様の動きが本格化している。
つい先日(2017年10月30日)、中国の配車アプリ「滴滴」が2018年春に日本進出すると報じられた。日本の自動車メーカーに決断の時が迫りつつある。
関連記事
- 自動車大国日本が誇る「つながるクルマ」は何が間違っているのか
「TU-Automotive Japan 2017」で語られたメインテーマの1つが「コネクティビティとデータ活用」だ。日本の自動車メーカーは、海外勢に負けじと、インフォテインメントやテレマティクスと関わるサービスを中核とした「つながるクルマ」の開発に注力しているが、そこにはさまざまな課題があるという。 - コネクテッドカーがもたらす自動車データ流通の衝撃
コネクテッドカーによって自動車データが流通する未来に向けて、転換期を迎える自動車業界。米国ミシガン州で開催された「TU-Automotive Detroit 2017」のレポートを通してその激動をお伝えする。次代のアマゾン、ウーバーといわれる、自動車データ流通で注目を集めるベンチャー・Otonomo CEOのベン・ボルコフ氏へのインタビューも行った。 - 新たな競争を生み出す「移動のサービス化」、5GはV2X通信の課題を解決するか
2020年を目標に商用化を目指す自動運転車と5G。両者への期待が相まって、自動車業界や通信業界の間でさまざまな「パートナーシップ」と「フラグメンテーション」が生まれている。「Mobile World Congress(MWC) 2017」レポートの後編では、「移動のサービス化」と「V2X通信」のエリアにおける動向を紹介する。 - 自動運転車と5Gがもたらす「パートナーシップ」と「フラグメンテーション」
2020年を目標に商用化を目指す自動運転車と5G。両者への期待が相まって、自動車業界や通信業界の間でさまざまな「パートナーシップ」と「フラグメンテーション」が生まれている。自動運転車と5Gが交錯した「Mobile World Congress(MWC) 2017」の展示を中心に、それらの動向を考察する。 - 「CES 2017」は自動運転車と人工知能のユートピアだった
2011年からモーターショー化してきた「CES」。2017年のCESは、ついに「自動運転車と人工知能のユートピア」となった。 - 「ナイトライダー」が現実に、音声アシスタントの進化が止まらない
脚光を浴びるIoT(モノのインターネット)だが、製造業にとってIoT活用の方向性が見いだしきれたとはいえない状況だ。本連載では、世界の先進的な事例などから「IoTと製造業の深イイ関係」を模索していく。第3回は、IoTと人工知能(AI)との連携によって進化が加速している音声アシスタント機能の動向に迫る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.