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新たな競争を生み出す「移動のサービス化」、5GはV2X通信の課題を解決するかMobile World Congress 2017レポート(後編)(1/3 ページ)

2020年を目標に商用化を目指す自動運転車と5G。両者への期待が相まって、自動車業界や通信業界の間でさまざまな「パートナーシップ」と「フラグメンテーション」が生まれている。「Mobile World Congress(MWC) 2017」レポートの後編では、「移動のサービス化」と「V2X通信」のエリアにおける動向を紹介する。

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 「自動運転」と「5G」の開発が加速することで、自動車業界や通信業界などの間でさまざまな「パートナーシップ」と「フラグメンテーション」が生まれている。前編では、2017年2月に開催された「Mobile World Congress(MWC) 2017」の展示レポートを中心に、「インフォテインメント」「テレマティクス」というエリアにおける主要プレイヤーの動向を紹介した。

 後編では「Mobility as a Service(移動のサービス化)」「V2X通信」という2つのエリアにおける主要プレイヤーの動向を見ていきたい。

「移動のサービス化」が新たな競争領域に

 日産自動車は2016年10月、欧州市場の商用車顧客に対し、フリート管理関連企業のテロジス(Telogis)との提携による次世代運行管理サービスを展開すると発表した。これは顧客の車両、人、作業履歴を連携させることにより、ドライバーの安全を確保しより良いサービスを提供するのと同時に、運用の効率化を実現するというものだ。

 テロジスは、2016年6月に米国通信事業者のベライゾン(Verizon)に買収されている。ベライゾンは同年8月にも車両管理のFleetmaticsを買収しており、通信事業に加えた新たな事業領域の1つとしてフリート管理に注力する姿勢がうかがえる。

 フリート管理は移動のサービス化の代表例といえる。既に運輸業界から多様なニーズが上がっており、各社ともさまざまなソリューションが展開されている。

 その1つとして、新たにMWC 2017で発表されたのがスカニア(Scania)と、大手通信設備ベンダーであるエリクソン(Ericsson)によるフリート管理サービス「Scania One」だ。Scania Oneは、フリート管理会社やドライバー、そしてエンドユーザーをつなぐオープンプラットフォームで、トラックなど商用車運行の効率性および生産性を向上させつつ、CO2削減にも貢献可能な各種サービスを展開する。また、例えばドライバー向けにSkypeなど車内で利用するアプリの配信も実現する。このサービスプラットフォームの裏にはエリクソンの「Connected Vehicle Marketplace」が活用されている。

スカニアの展示
スカニアの展示(クリックで拡大)
フリート管理サービス「Scania One」の画面フリート管理サービス「Scania One」の画面 フリート管理サービス「Scania One」の画面(クリックで拡大)

 Connected Vehicle Marketplaceは、車両データ向けオープンAPIを提供し、収集したデータを同プラットフォームの利用企業間で共有ができるというもので、パートナー管理やビリングソリューションの提供などにも活用可能とのことだ。利用可能な車両データは、サービス提供事業者が必要とするもののみに限られるだけでなく、データ所有者の同意が必要となる。

 例えば、保険会社が走行データを見て、安全に運転しているということが分かったならば保険料を安くするという提案ができるとしても、ドライバーや運営会社などがデータの提供を拒絶すれば保険会社はそのデータを活用することができない。こういったデータの所有者が自身に関わるデータのコントロールをできる点も、このプラットフォームの大きな特徴となっている。

 さらにこのプラットフォームには、利用する車両データ別にデータ利用料が設定できたり、サービス提供により得られた収入をレベニューシェアできたりといった機能も有しており、今後のコネクテッドカービジネスにおいて注目のプラットフォームとなるだろう。

 しかし前編で紹介した通り、類似のサービスプラットフォームはIT企業各社からも展開されており、コネクテッドカーを巡るエコシステムの構築に当たり、新たな競争領域となりうる。

エリクソンの「Connected Vehicle Marketplace」のイメージ
エリクソンの「Connected Vehicle Marketplace」のイメージ(クリックで拡大)

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