デジタル変革はもうかる? 平均60億ドルの時価総額増が可能と調査:製造ITニュース
アクセンチュアは、デジタル技術の活用状況とその効果に関する調査を実施した。3Dプリンティング、AIなどの重要技術を最適に組み合わせることで、企業は時価総額を平均60億ドル(約6815億円)高められるという。
アクセンチュアは2017年10月26日、企業におけるデジタル技術の活用状況と活用によって得られる効果に関する調査結果を発表した。調査は、日本を含む21カ国、12業界における大企業の上級役職者931人を対象に実施した。また調査の後、企業の時価総額と従業員1人あたりのコストを評価する経済モデリングを策定した。
経済モデリングの策定にあたっては、3Dプリンティング、AI(人工知能)、AR・VR(拡張現実・仮想現実)、自律型ロボット、自動運転車、ビッグデータ分析、ブロックチェーン、デジタルツイン、機械学習、モバイル・コンピューティングの10種類の重要技術を特定。売上10億ドル(約1136億円)以上の企業が、従業員1人のコストを大幅に削減しつつ時価総額を高められるような、最適な技術の組み合わせを検証した。
検証の結果、これらの重要技術を最適に組み合わせることで、企業は時価総額を平均60億ドル(約6815億円)高められることが判明した。例えばエネルギー企業の場合は、VR、ビッグデータ分析、AIを組み合わせることで時価総額を160億ドル(約1兆8174億円)以上高められる。産業機器メーカーは、ロボティクス、AI、ブロックチェーン、ビッグデータ分析、3Dプリンティングの技術を組み合わせれば、従業員1人あたり4万3000ドル(約488万円)以上のコスト削減が可能となる。
一方、同調査では、企業が直面する課題も浮き彫りになった。「デジタル技術への投資によって新たな収入源を創出し、業務効率化と成長を実現できている」と答えた回答者は13%にとどまった。アクセンチュアでは、その要因をデジタル技術への断片的な投資によるものと分析している。また、回答者の80%が「これまでにない効率性や成長、体験を全て同時に実現したい」と考えており、64%が「デジタルの価値を活用しなければ、将来的に苦戦を強いられる」と回答。さらに29%が「デジタル分野のスキルが不足しているため、相互接続可能な製品を活用してイノベーションを生み出すことが難しい」と回答している。
今回の調査では、企業が製品やシステム、工場での相互連携を進めることで、既存の職務に新たな責任が加わるだけでなく、新しい職務が生まれることが明らかになった。回答者の55%は、「無くなる職務より新たに生まれる職務の方が多い」と回答し、56%が「既存の職務は今後、拡大または発展していく」と答えている。
アクセンチュアでは、デジタルがもたらす変革に対する同社の考え方として提唱する「インダストリーX.0」の重要性が今回の調査で明らかになったとし、技術の変化を取り入れながら利益を生み出すインダストリーX.0を推進することで、デジタルによる価値創出を加速できるとしている。
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