生産情報管理のIoT活用はどのように実践すべきか:トヨタ生産方式で考えるIoT活用【実践編】(1)(3/3 ページ)
日本型モノづくりの象徴ともいうべき「トヨタ生産方式」の利点を生かしたIoT活用について、実践編として、より具体的な「導入のポイント」や「活用する手段」を説明する本連載。第1回は、生産情報管理におけるIoT活用について解説します。
3.生産情報管理におけるIoT活用ポイント
ここからは、生産情報管理におけるIoT活用のポイントについて説明します。
(1)情報収集
情報収集手段としてエッジコンピューティングの活用があり、超小型PC(ラズベリーパイなど)とセンサーを組み合わせた事例が多くなっています。
この組み合わせの特徴としては「情報を自動で収集」「低価格で仕組みを実現」が可能な点です。例えば、磁気センサーの接触やカウンターのタッチにより生産数を自動カウントすることができます。カウントした数だけでなく、カウントする間の時間を取得するとサイクルタイムのバラつきや停止時間も見ることができます。今まで日報に正の字を記入することが多かった現場作業者には大助かりです。
注意点は、連続稼働できない場合の発生です。その際は手書きで対応するといったイレギュラー対応の考慮が必要です。精度よりも改善のツールとして割り切ることが重要です。
(2)情報活用
情報活用手段はビッグデータ解析としてBIツールの利用が主流となっています。特徴としては「現場からの日々のものづくりの明細データをリアルタイムで処理」「月次⇒日次⇒直単位⇒明細データへのドリルダウンし要因特定を迅速化」「類似項目の絞り込みと状況把握が即時に対応可能」といった点が挙げられます。
Excelで管理資料を作成している企業は今でも多くありますが、最近はビッグデータを扱うために、中小企業でもBIツールの利用事例が増えてきました。かつては高価なパッケージソフトだったBIツールも、最初は無料で利用し、本格的に使う段階の一括購入やサブスクリプション利用(月額や年額の定額課金)する契約形態が主流となっています。確実な効果が見える段階で投資できるので、利用のハードルは低くなっています。
注意すべきは「データ活用に最適なデータモデルをあらかじめ作成しておく」「ごみデータはフィルタリングする」「計算式はドリルダウンを考慮して、原単位で軸を決めておく」といった点です。
例えば、可動率は「可動率=(良品数×MCT)/実稼働時間」で算出します。ここで「良品数」「実稼働時間」を集計値(メジャー)で設定し、集計単位(軸)を「年月」「年月日」と定義しておきます。
そうすることで「年月」「年月日」の軸に合わせて「良品数」「実稼働時間」をあらかじめ集計して可動率を算出することができます。これにより「年月」「年月日」のグラフを1つのフォーマットで表現できるのです。これをExcelでやろうとすると、それぞれグラフを分ける必要があり、シートやファイルも分かれるため、データの整合性がとれていなかったり、複数のファイルを開くので時間がかかったりして操作が煩雑になる点が不便でした。それに比べると直感で必要なデータにたどり着けるので大変便利です。
4.まとめ
生産情報管理にIoTを活用するポイントについて図6にまとめました。ぜひ、業務改善手法とIoT活用を組み合わせて、現場改善活動の推進に生かしていただきたいと思います。
無料セミナーに山田氏が登壇!
本連載を執筆するアムイの山田浩貢氏がセミナー(参加費無料)で講演を行います。詳細は以下のWebサイトをご確認ください。
講演テーマ:トヨタ生産方式で考えるIoT活用 IoTを活用してモノづくりを強化するポイントとは
イベント日時:2017年11月8日(水)13:30〜17:00(受付開始13:00〜)
会場:アクトシティ浜松 研修交流センター402
Webサイト:https://mp.ashisuto.jp/public/seminar/view/8194
イベント日時:2017年11月9日(木)13:30〜17:00(受付開始13:00〜)
会場:富士市交流プラザ 第3会議室
筆者紹介
株式会社アムイ 代表取締役
山田 浩貢(やまだ ひろつぐ)
NTTデータ東海にて1990年代前半より製造業における生産管理パッケージシステムの企画開発・ユーザー適用および大手自動車部品メーカーを中心とした生産系業務改革、
原価企画・原価管理システム構築のプロジェクトマネージメントに従事。2013年に株式会社アムイを設立し大手から中堅中小製造業の業務改革、業務改善に伴うIT推進コンサルティングを手掛けている。「現場目線でのものづくり強化と経営効率向上にITを生かす」活動を展開中。
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