“脱系列”時代の原価企画、IoTで高い見積精度を確保する:トヨタ生産方式で考えるIoT活用(7)(1/5 ページ)
日本型モノづくりの象徴ともいうべき「トヨタ生産方式」。本連載では多くの製造業が取り入れるトヨタ生産方式の利点を生かしつつ、IoTを活用してモノづくりを強化するポイントについて解説していきます。第7回は、原価企画にIoTを活用する考え方について説明します。
どの製造業も、多品種の製品ラインアップに対し、どうすれば利益を確保できるかに苦心しているのではないでしょうか。
本連載「トヨタ生産方式で考えるIoT活用」の第6回では、トヨタ生産方式を導入している企業(製造業)を例に、原価企画にIoT(Internet of Things、モノのインターネット)を活用する考え方について説明していきます。
自動車業界における取引
自動車も顧客の嗜好の多様化に合わせどんどん多品種になっております。
車種も増加していますし、同じ車種の仕様もハイグレード、ノーマルグレード、ローグレードと大きくは分かれておりますが、オプションなども含め細かく分類すると莫大な種類になります。その中で顧客に魅力的な値決めをし、適正な利益を確保していくのは困難なことです。特に自動車部品メーカーは、完成車メーカーとの間で最初に価格を決めると、その中で利益を確保していかなければどんどん赤字を積み重ねることになります。
従って、十分に利益確保できる金額で契約をしたいのですが、競合他社との激烈な価格競争を勝ち抜くのは並大抵のことではありません。昔は系列が強い契約形態のため、受注した後での価格調整が何とか許されていたようですが、系列の垣根を超えた取引に移行している混沌とした現在は、最初に無理な価格で受注すると致命的になります。従って、自社の実力に合わせた精いっぱいの努力範囲で利益確保可能かの検証をしっかり行って受注をする必要があるのです。
原価企画とは
原価企画は文字通り原価を企画することです。これは見積をする段階で顧客の品質、コストの要求を満足するために企業の精いっぱいの努力をして原価を作りこむ業務となります。
具体的には、材料を購入し、加工し、付加価値を付けて顧客から要求されたモノを作るのですが、モノの構造の仕様、材料の質、加工方法を工夫して要求に近づけていくことになります。
例えばトランスミッションのような歯車を組み合わせたモノは、低グレードの車種とハイグレードの車種では鋼材の質、硬度、歯車の精度の要求がそれぞれ異なります。それに合わせて、製品の原価も異なります。
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