日本版第4次産業革命が進化、製造含む5つの重点分野と3つの横断的政策(前編):製造業IoT(3/3 ページ)
経済産業省は2017年3月に発表した日本版の第4次産業革命のコンセプトである「Connected Industries」を進化させる。より具体的な取り組みを盛り込んだ「Connected Industries 東京イニシアティブ 2017」を新たに発表した。本稿では2回に分けてその内容をお伝えする。
データ契約ガイドラインの改訂
IoTによりデータの利活用の場が広がると、従来の枠内では収まらないビジネスモデルなども登場し、契約の重要性が高まることになる。経済産業省では2017年5月に「データの利用権限に関するガイドラインver1.0」を策定しているが、まずは全体的な注意点などの概略にとどめた段階としていた。これをさらに深堀りし、個別分野のユースケースの充実などに取り組む。また、新たにAIの責任関係や権利関係についてのガイドラインを追加する方針。2018年3月までに改訂を行うとしている。
ネットとリアルのハイブリッド人材、AI人材などの育成強化
人材育成については、ネットとリアルの双方に精通したIoT人材、AIやビッグデータなどの技術をリアルな現場を有する産業分野で活用していく人材などが不足しているという認識に立ち、この育成への取り組みを積極的に支援していく方針である。
「Connected Industries」の取り組みなどを通じて産業界の人材ニーズを吸い上げるとともに、ITおよびデータ分野を中心としたスキルの習得支援、プログラム開発支援などについて、文部科学省とも連携を進めていくという。
地域・中小企業へのさらなる展開
地域や中小企業への支援に向けては、日本商工会議所やIVI(インダストリアルバリューチェーンイニシアチブ)、ロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)といった民間団体や、よろず支援拠点や地方版IoT推進ラボなどと連携を強化する。カリキュラムなどの共有を幅広く横断的に全国展開し、中小製造業者の第4次産業革命への対応を支援していく拠点構築を目指すという。
さらに、「Connected Industries」に関連するベンチャーの育成や支援を実現するために、「Connected Industries ベンチャー懇談会」を設立し、ベンチャーと大企業の連携などによる新たなエコシステムの創出に取り組んでいく。
まだ、具体的な政策と抽象的な領域が残っているが、これらのように日本政府も経済産業省だけでなく、総務省や文部科学省など省庁の壁を越えて、日本版第4次産業革命ともいえる「Connected Industries」の実現への取り組みを強化していく方針だといえる。後編では、重点5領域での具体的な課題と取り組みについて紹介する。
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