トヨタの自動運転実験車が進化、助手席にもステアリング、アクセル、ブレーキ:自動運転技術
トヨタ自動車の米国子会社で人工知能(AI)などの研究開発を行うToyota Research Institute(TRI)は、自動運転技術などの開発の進捗状況を発表した。合わせて、トヨタ自動車の自動運転技術に関するビジョンや戦略をまとめた「自動運転白書」も公開された。
トヨタ自動車の米国子会社で人工知能(AI)などの研究開発を行うToyota Research Institute(TRI)は2017年9月27日、自動運転技術などの開発の進捗状況を発表した。自動運転技術の他、ロボティクスやAIについても報告。また、トヨタ自動車の自動運転技術に関するビジョンや戦略をまとめた「自動運転白書」も同日公開した。
2万3000字を超える自動運転白書は、トヨタ自動車の開発指針や取り組んでいる研究内容の他、2020年代前半に実用化を目指す一般道の自動運転など技術の導入計画をまとめている。自動運転をめぐる今後の課題をステークホルダーと共有し、社会的な議論を喚起する目的で発表した。
半年間での自動運転車の進化
TRIは2017年3月に自動運転の実験車両を公開しており、今回発表したのは半年間での改良点だ。まず、ディープラーニング(深層学習)やコンピュータ認識モデルの研究成果を反映して、迅速かつ効率的で正確なシステムを実験車両に用いた。障害物や路面状況の検知、周辺環境への正しい理解、安全な運転ルートの予測が可能になった。収集した標識や路面の白線のデータは自動運転向けの地図情報の作製に活用することができる。
実験車両に搭載するライダー(LiDAR:Light Detection and Ranging)も新型に切り替えた。認識距離や映像処理能力が向上したLuminar Technologies製ライダーを搭載。立体物の位置をより正確に把握できる。また、視野を調整して最も認識が必要な方向に焦点を合わせられるようにした。
助手席にはドライブバイワイヤのステアリングやアクセル、ブレーキを設置した。手動運転と自動運転を安全かつ効果的に切り替える方法を研究していく。人から運転を学んだり、人に運転を教えたりする機械学習のアルゴリズムの開発にも役立てる。
実験車両は、高度安全運転支援「ガーディアン」と自動運転「ショーファー」、いずれの自動運転機能にも1台で対応する。ガーディアンとショーファーで同じセンサーやカメラを使用する想定だ。ガーディアンは人が運転することを前提に、衝突の可能性がある時などに運転を支援して乗員を保護するもの。ドライバーの注意散漫な場合や、居眠りしている場合には警告の上でブレーキやステアリングの操作を行う。ショーファーはレベル4〜5の自動運転に相当する。障害物を回避しながら自律的に走行したり、隣の車線を走行する車線を注意しながら安全に車線変更する。
表示によるドライバー支援も検証を進めている。ショーファーとガーディアンのどちらが作動しているか、センサーが周辺環境をどのように認識しているかを、センタークラスタなどに分かりやすく示す。
クルマの乗員が快適に過ごすためのAI活用も模索している。ドライバーの姿勢や頭の位置、視線や感情の認識結果からドライバーのニーズや運転に支障を来す状況を予測するシミュレーターを開発した。ドライバーの動作や表情から仮説を立てて空調などを操作したり、休憩を取るよう促してコーヒーショップなどに誘導したりする。
ロボット研究では、人と同じようにモノを器用につかんで扱えるようにする新技術などを開発している。コンピュータビジョン技術やAIを活用し、ロボットが人やモノの位置を把握して指示に従ってモノを運んだり、人やモノの位置情報を蓄積したりする。人の顔を識別することも可能だとしている。試験で得たデータを活用したシミュレーションの精度向上にも取り組んだ。
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