人ができないことを支える、それがハピネスなロボット:協働ロボット(2/2 ページ)
2020年に開催される日本発のロボットチャレンジ「World Robot Summit」に向け、記念シンポジウムが都内で開催。WRSの実行委員会諮問会議 委員長であるカーネギーメロン大学ワイタカー冠全学教授の金出武雄氏が登壇し、将来に向けた「幸せのためのロボット」の在り方を訴えた。
3つ目の概念の進展である「Enhance」
3つ目の概念の進展は「個々のシステムから、トータルあるいは環境システムへ」(Enhance)というものだ。「これまでロボットは1つ1つのシステムが個々に動くようなかたちだった。しかしこれからは、ロボットが働く環境において、総合的に価値を実現していかなければならない。例えば、農業用ロボットとして、刈り取りだけにロボットを使うのでは効率が良くならない。他にも、農作物の生育の状況などを自動的に見極めることや、刈り取り後の検査やパッキングなど、育成から出荷までをトータルで取り組む概念が必要となる。現在はそうした方向に向かっている。技術者たちはこうしたシナリオを描く必要がある」(金出氏)と述べている。
この他、小さなマグネットを外から操作して、目の手術を行うシステムの研究例や、バクテリアの動きをまねした器具をマグネットで作り、それを血管の中に通して動かし、薬を病巣に確実に送る研究例などについても紹介した。金出氏は「ロボットは、こうあるものだという凝り固まった概念から抜け出すことが必要だ」と強調する。
WRSは人と機械のショーケース
さらにWRSについては「人と機械のショーケースであり、コンペティション(競合)、コラボレーション(協同)の場でもある。そして学習と教育などにも意味を持つ。インタラクションとイノベーションにより、地域振興などにもつながる」と意義について述べた。
イノベーションの組織と環境については「異分野のインタラクション、研究と教育の密接な関係、地域と密着した活動(地域の強み)、アイデア・資金・研究開発・企業のダイナミズム、人材をひきつける・提供する、などの要素が必要だ」と金出氏は指摘する。
さらに「『理想のロボットのすべきこと=(イコール)人のしたいこと−(マイナス)その人のできること±Δ(プラスマイナスデルタ)』という公式が成り立つ。つまり、その人が自分でできることは何も手を助けない方がよい。『±Δ』はその機能を保持する、または失った機能を取り返すということであり、それを分かっているロボットがハピネスなロボットとなるだろう」と金出氏はロボットの理想像について語っている。
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