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「ヒト型ロボットは最適ではない」IEEEフェロー広瀬氏が語るロボット開発の方向性ヒト型の是非

ヒト型をしたロボットは強いインパクトを持つことから、ロボット=ヒト型というイメージを抱く人もいる。ただ、150体以上のロボットを製作し、現在もロボット開発の第一線に立つIEEEフェローの広瀬茂男氏は「ヒト型がロボットの将来ではない」とイメージ先行の未来に警鐘を鳴らす。

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 ホンダ「ASIMO」に産業総合技術研究所「HRP」シリーズ、それにソフトバンク「Pepper」など、ヒト型をしたロボットは強いインパクトを与えることもあり、ロボット=ヒト型というイメージを抱く人もいる。

 東京工業大学で150体以上のロボットを製作し、現在もロボット開発の第一線に立つIEEEフェローの広瀬茂男氏(東京工業大学名誉教授、立命館大学客員教授、ハイボット 取締役 CTO)が2014年10月9日に行われたIEEE主催の「ロボットの現状とこれからの未来像」と題したセミナーで「ヒューマノイド型がロボットの将来ではない」とイメージ先行の未来に警鐘を鳴らした。

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IEEEフェロー 広瀬茂男氏
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photophoto 広瀬氏の手掛けたさまざまなロボットの一部。全て制約の中で設定された目的を果たすことに重きを置いたロボットだ。
配管を模したパイプを上っていく、配管点検用ロボット

 広瀬氏はこれまでに数多くのロボットを開発してきたが、形状としては蛇型や四足歩行型、アームのみなど、その全てが目的に最適化された、ヒト型ではない形状を選択している。そして「未来のロボットがヒューマノイド型になっていくとは考えていない」とし、その理由について以下の4点を挙げる。

  • 技術的な困難さ

 ヒューマノイドロボットの実現には器用な腕と高度な視覚系、高性能な動力源と駆動系、何よりも本物の人工知能が必要となる。これまでのロボット開発の進展を見る限り、50年後であっても(イメージされるような)ヒューマノイドロボットの実現は困難と思える。

  • 人間の形は最適ではない

 生物学的に見れば人間は魚から四本足、そして二足歩行と進化しており、現在の人間の形態は発生学的制約を受けてのものにすぎない。人間の背骨はS字型をしているが、それは4足から2足へと歩行の仕方を変えた結果であり、後遺症であると考える。

  • 技術進化の自然な流れに反する

 道案内は助手席のナビゲーターが行う時代から、カーナビゲーションシステムが行う時代になった。ナビゲーションは助手席のヒト型ロボットが行うべきだろうか? 技術は全体として発展していくので、ヒューマノイドロボットが実現した際には他の機器も進化しているはずだ。未来社会では全ての機械がロボット化した、ユビキタスロボット社会になるだろう。

  • 健全な人間関係が維持しにくい、ロボット技術に対する誤解を与える

 人間社会は人間の形に合わせてデザインされているので、ロボットもヒト型が最適だという意見はある。ただ、高低差を克服するための階段を上るために、二足歩行ロボットが必要だろうか。高低差を克服する目的を果たすためならば、車輪でもエレベーターでもよい。

 ヒト型の方が、社会の中で使われる際に心理的な障壁が低いという意見もある。そうした局面もあるだろうが、トイレでヒト型ロボットの世話になりたいだろうか。ウォシュレットを使う方が心地よいはずだ。

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ソフトバンク「Pepper」に対しては私見としながらも「(家庭に入ってゆくには)大きすぎる。テレビの知能化が本命ではないか」とコメント

日本が目指すべき、ロボット開発の方向性

 広瀬氏は「ヒューマノイドロボット開発はロボット工学発展のために有効」とヒューマノイドロボットを否定する訳ではない。ただ、現在の機械電子部品そしてコンピュータ技術では実現性が低いヒューマノイド型をロボット開発の方向性として定めるのではなく、「与えられた制約の中で、必要最小限の機能が達成可能なロボットの実現を目指すべき」という。

 その一例として広瀬氏は、セル生産方式(1人、または少数の作業者で製品組み立てを完了させる生産方式)の補助ロボット開発を挙げた。工場の生産ラインではロボット導入を始めとしたFA(Factory Automation)化が急速に進んでいるが、まだ多くの部分で人の手による作業が行われている。この補助を行うロボットの開発を進め、技術の蓄積をすべきだというのだ。

 そうして蓄積された技術を用いて、工場という「環境をロボットに合わせられる場所」から、一般社会、つまり「ロボットが外環境に合わせる必要がある場所で活躍でき」さらには「人を支援するロボット」を開発していくべきだという。

 そうして開発されたロボットは林業や漁業、福祉介護、社会インフラ点検などの分野で人をアシストする導入が期待でき、結果として高齢者や女性の社会参加を促し、地方の活性化にもつながるとしている。

 ロボットと人との共生について広瀬氏には「人と人とのつながりを重視し、それを助ける方向性を模索するべきだ」という持論がある。例えば、「高性能なスポーツロボットが誕生してもスポーツインストラクターは人と人の交流も含む職業であり、尊重されるべきだ」「家事を行うホームロボットは、小さな子どもと母親が一緒にいる時間を増やすための存在であるべき」「認知症状態となった人の話はロボットではなく人が聞くべきで、その人が十分な給与と使命感を持てる社会システム構築のため、ロボットは導入されるべきだ」などだ。

 広瀬氏も指摘するよう、ヒューマノイドロボット開発はロボット技術の底上げを担う役割も果たしているが、ヒューマノイドロボットがイコール、全てを満たす万能のロボットだという思い込みも危険だ。ロボット技術が進歩し裾野が広がった今こそ、ヒトとの関係性という要素を加えた上で、ロボットに「何を求め」「何を実現する」か、十分に考える時期が来たといえる。

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