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人ができないことを支える、それがハピネスなロボット協働ロボット(1/2 ページ)

2020年に開催される日本発のロボットチャレンジ「World Robot Summit」に向け、記念シンポジウムが都内で開催。WRSの実行委員会諮問会議 委員長であるカーネギーメロン大学ワイタカー冠全学教授の金出武雄氏が登壇し、将来に向けた「幸せのためのロボット」の在り方を訴えた。

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 人間とロボットが共生し協働する世界の実現を念頭に、幅広い分野でのロボットの活用が進められている。こうした中、経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では、ロボットの社会実装と研究開発を加速させることを目的として「World Robot Summit(WRS)」の開催を計画※)。2018年にプレ大会(東京)、2020年に本大会(愛知、福島)を予定する。

※)関連記事:2020年にロボットの国際大会を日本で開催、3分野6種目で実施

 今回、このWRSプレ大会を1年後に控えて、東京都内でWRSのメッセージである「Robotics for Happiness」をテーマに、シンポジウムが開催された。本稿では、この中で登壇した、WRS実行委員会諮問会議委員長の金出武雄氏(カーネギーメロン大学ワイタカー冠全学教授)の講演「Real World Robots:Actors,Helpers and Enhancers」の内容を紹介する。

 金出氏は1974年京都大学で工学博士号取得後、京都大学の助教授などを経て、1980年に米国カーネギーメロン大学に移った。1992〜2000年には世界的に有名な同大学ロボット研究所所長として勤務。1998年からワイタカー冠全学教授の称号を持ち、現在コンピュータビジョン、マルチメディア、そしてロボット工学において先駆的研究に取り組んでいる。

 主な研究成果には、1981年発表の動画像処理における最も基本的アルゴリズムとされる「Lucas-Kanade法」、1995年に最初にアメリカ大陸横断した自動運転車「Navlab 5」、2001年のNFLスーパーボウルで採用された30台以上のロボットカメラで270度の視野の映像を撮影する「Eye Visionシステム」などがある。

ロボット概念の3つの進展

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WRSの実行委員会諮問会議 委員長でカーネギーメロン大学ワイタカー冠全学教授の金出武雄氏

 こうした実績を持つ金出氏が、今回取り上げたのが「ロボットの概念の進展」である。

 これには3つの軸があるという。以前のロボットはからくり人形のように機械機構的なプログラムで動いた。これが近代になると、コンピュータで動きをプログラム化するようになった。そのため、ロボットはメカニズムという概念から離れて、情報によって駆動するようになった(インフォメーションドリブンメカニズム)。これが現在のロボットの姿を作り出したといえる。これが1つ目の進展である。この概念を得た時点で「機械は必ずしもメカニカルなシステムでないということに気が付いた」(金出氏)とする。

 2つ目の概念は「ロボットが人を完全にトラッキング(追跡)できるようになった」ということから生まれている。今までのロボットは単にモノを認識するだけだったが、今は人の動きを完全にトラッキング(追跡)できるようになってきている。従来の単なる大きな行動の分類(歩く、座る、蹴るなど)でなく、四肢や指までの精密な動きを完全に追跡する技術が登場してきている。これによりロボットの概念は「『人の代わり』から『人とともに』『人のためへ』」(Help)へと変わってきた」と金出氏は説明する。人が何をしているかが分からなければ、助けようがないということからだ。

 金出氏はその1つの例として、最近の研究の中で取り組んでいる「Smart Headlight」を紹介した。この研究は「夜間、運転中に雨や雪が降ってきた時、水滴や雪にライトが当たり白っぽく見えて、視界が悪くなる。これを、ヘッドライトの光を雨に当たらない様にコントロールする機械」(金出氏)だという。

 この機械の開発は簡単だそうで、少しだけ雨に光を当てて、すぐにカメラで画像を撮影する。そこで「どこに雨粒があるか」を見て、車の前方のカメラとライトを制御するという仕組みである。

 実際にカメラとプロジェクターで実証を行ったという。カメラで画像を撮影し、雨粒に当たって反射する光をオフにすると、雨粒が光らなくなる。この機械を車載すれば雨粒が光らなくなり、雨の夜でも明瞭な視界が確保できる。この他、対向車のハイビーム、ロービームについても、相手の運転手の目に入る光線だけをオフにすれば、相手はまぶしくなくなる。この装置を有効活用すれば夜間の横断者も見つけやすくなり、人間の安全を守るためのシステムとなっていく。こうした「人を見て、人を助ける形への進展」が第2の概念の進展だという。

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