空気不要のタイヤ、時速120kmでの走行が可能に:タイヤ技術(2/2 ページ)
東洋ゴム工業は、空気の充填(じゅうてん)が不要なタイヤ「noair(ノアイア)」を発表した。エアレスタイヤの開発には2006年から取り組んでおり、今回発表したノアイアはスポークの構造を大幅に変更している。市販タイヤ並みに耐久性や転がり抵抗、車外騒音を改善した。
転がり抵抗とウエット制動距離は市販品以上に
試乗会では、東洋ゴム工業がテストコースでノアイアと市販タイヤを比較した結果も紹介した。市販タイヤは同社のベーシックタイヤである「トーヨー テオプラス」(155/65R13)、ノアイアは外形540×幅140mmの14インチ相当のサイズで比較した。
ノアイアは、耐久力で155/65R13サイズの法規に相当する基準をクリアした。法規を満たさない従来の試作品の8倍の耐久性となる。転がり抵抗値は市販品から25%改善、ウエット制動距離は市販品と比較して4%向上している。車外騒音は155/65R13サイズの法規を1dB超えているが、従来の試作品が法規を10dB上回っていたので大幅に改善したといえる。
試乗会は、万博記念公園(大阪府吹田市)の敷地内の舗装された広場で行った。晴天だったこともあり路面は乾いていた。ノアイアを装着したアルトを運転してみたところ、直進やコーナリングの運転感覚に特に違和感はない。急ブレーキの停止距離は日頃運転する空気入りタイヤとそん色ない。また、速度の割によく転がるという印象だった。強いていえばロードノイズが目立つかもしれない。
試乗車両が走る様子を車外から眺めていると、カラカラという空気入りタイヤでは聞かない音が聞こえた。これがスポークの打撃音なのだという。耳障りな音量ではなかった。
量産にはまだ遠い?
東洋ゴム工業のテストドライバーのフィーリングテストでは、操縦安定性や車外騒音が従来の試作品から飛躍的に改善したとの評価だったという。一方で、車内音や乗り心地の硬さは空気入りのタイヤにまだ及ばないため、今後の改良点として挙げられている。路面からの入力を低減するには、スポークの形状や外径リングの工夫がさらに必要になるという。
ウレタンを使用することによるリサイクル上の制約や、外見上の劣化につながる耐候性の解決も今後の開発課題となる。また、1トン以上の車両重量の乗用車にも適用させる他、より高い速度域での走行も目指して開発を進めていく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- タイヤ製造工法に「革命」を起こす東洋ゴム仙台工場、会長が語る“逆の発想”
シンプルであるが故に抜本な改革が起こりにくいタイヤ技術。しかし製造工法に革命を起こし海外に打って出ようという日本企業がある。国内シェア4位の東洋ゴム工業だ。新工法を展開する仙台工場を小寺信良が訪ね、同社の中倉健二会長にインタビューした。 - ブリヂストンの「空気のいらないタイヤ」が超小型EVで使用可能に、実用化も視野
ブリヂストンは、「第43回東京モーターショー2013」において、空気を充てんする必要のないタイヤ「エアフリーコンセプト(非空気入りタイヤ)」の第2世代品を披露した。超小型EV「コムス」に装着して走行する映像も公開。数年後以内を目標に実用化したい考えだ。 - 空気のいらないタイヤ「ジャイロブレイド」は空気入りに劣らない乗り心地
住友ゴム工業は、「東京モーターショー2015」において、空気充てんが不要なエアレスタイヤテクノロジー「GYROBLADE(ジャイロブレイド)」を初公開した。樹脂スポークを使った空気のいらいないタイヤでは後発となるが「高いユニフォミティを確保できており、振動が少なく乗り心地の良いタイヤを実現できている」という。 - タイヤがセンサーになる技術を世界初の実用化、2020年までに一般車に展開
ブリヂストンは、タイヤで路面状態をセンシングする技術「CAIS(カイズ)」が冬季の高速道路管理に採用されたと発表した。今後は、鉱山用トラックやバス、航空機などでの活用も見込んでおり、2020年までに一般の乗用車への展開も目指すとしている。 - ロードノイズが10dB減少、タイヤのホイールに樹脂部品を足すだけ
ホンダが開発したホイールでロードノイズを低減する技術「タイヤ気柱共鳴音低減デバイス」が「第14回新機械振興賞」の「機械振興協会会長賞」を受賞した。高級車種から搭載がスタートした技術を、普及価格帯までコスト低減を図った点が評価された。 - ハンドルが楽々切れるって、実はすごいこと
普段何げなく操作しているハンドルだけど、実はものすごい力が掛かっている。そんなハンドル(ステア)の仕組みを解説。