躍進するオープンソースPLM、ArasにGEとシルバーレイクが4000万ドルを出資:製造マネジメントニュース
アラスジャパンはユーザーコミュニティイベント「ACE 2017 Japan」を開催。同イベント内で新たにGEベンチャーズとシルバーレイクから4000万ドルの資金調達を行うことを発表した。
米国Arasの日本法人であるアラスジャパンは2017年9月7日、都内でユーザーコミュニティイベント「ACE 2017 Japan」を開催。同イベント内で新たにGEベンチャーズとシルバーレイクから4000万ドルの資金調達を行い、プラットフォーム開発を加速させる方針を示した。
米国Arasは2000年創業のPLM(プロダクトライフサイクルマネジメント)ベンダーである。創業当初からPDM(プロダクトデータマネジメント)などCADデータを管理するだけのソフトウェアではなく製品に関わるデータを全て管理する基盤としてのPLMを目指して開発を推進してきたことが特徴である。
さらに、同社のPLMの特徴は「エンタープライズ・オープンソース・ビジネスモデル」という製造系のソフトウェアベンダーとしては珍しいビジネスモデルを取っていることにある。同モデルでは、ソフトウェアやライセンスを販売しない。その代わりに、ソフトウェアに掛かるサポート費用やメンテナンス費用をサブスクリプション(定期契約)で提供する。さらに全てのソリューションをクラウドで提供しているため、最新の技術を常に活用し続けられる利点を持つ。
これらが評価を受け、徐々にユーザーも拡大。米国のGM(ゼネラルモーターズ)やマイクロソフト、GEアビエーション、ボーイング、フランスのエアバスなど、数多くの大手製造業が採用しユーザー数を伸ばしている。
ユーザーが拡大し、MBSE(モデルベースシステムズエンジニアリング)やコネクテッドカーなど、さまざなニーズが広がりを見せる中、さらに開発を加速させる必要がある。これらを背景にテクノロジー分野の投資に定評のある米国の投資会社シルバーレイク(Silver Lake)のファンドであるシルバーレイク・クラフトワーク(Silver Lake Kraftwerk)が、米国ゼネラル・エレクトリック(GE)の投資部門であるGEベンチャーズ(GE Ventures)とともに、Arasに対し4000万ドルの資金調達を行うことを発表。Arasでは今後、得た資金を生かし、開発と買収を通じてさらなるポートフォリオの拡充やプラットフォーム強化に取り組んでいく方針である。
Aras創業者でCEOであるピーター・シュローラ(Peter Schroer)氏は「大型出資によりArasは変わるのかと問われれれば、一部は変わるが大部分は変わらないだろうと答える」と述べる。具体的には「われわれ3社はビジョンを共有している。Arasが重視してきたオープンソースPLMアプローチやコミュニティー、サブスクリプションモデルなどは全て変えないで続けていく。さらに既に発表している製品ロードマップについても基本的には変わらない」と語っている。
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