「Bluetooth Mesh」が家電のIoT化を加速する:IoT観測所(36)(3/3 ページ)
メッシュ接続が可能なBluetoothである「Bluetooth mesh」の仕様が策定された。既に利用されているZigBeeやZ-Waveなどのメッシュネットワークと異なるのは、Bluetoothを搭載するスマートフォンやタブレット端末をコントローラーとして利用できる点だ。
主要メーカーは一斉にBluetooth Meshへの対応を表明
さて、話をBluetooth Meshに戻す。SilvairとしてはこのSilvair Meshを独自のものとして提供するのではなく、標準的なプロトコルにするようにBluetoosh SIGに働きかけを行った。結果、2015年2月にBluetoosh Smart Mesh Working Groupが立ち上げられ、ここでメッシュネットワークへの対応が審議されることになった。
2015年11月にはこんなプレスリリースも出しており、やる気満々といったところである。ただ、当初は2016年中に標準化が完了するかと思われたのだが意外に難航し、標準化が完了したというアナウンスは2017年7月18日までずれ込んだ。
もっとも2017年前半から、Bluetooth SIGのメンバー各社は水面下でBluetooth Meshへの対応を進めていた。例えば写真1は2017年6月の「COMPUTEX/TAIPEI 2017」におけるGunitech Corpのブースだが、既に製品展示を行っている手回しの良さである。
写真1 「COMPUTEX/TAIPEI 2017」におけるGunitech CorpのBluetooth Meshの展示。本来この時点ではまだBluetooth Meshをアピールしてはいけないような気がするのだが、まぁ台湾企業なのでフライングが日常茶飯事ではある(クリックで拡大)
そしてBluetooth SIGの発表にあわせて、TEE(Toshiba Electronics Europe)、TAEC(Toshiba America Electronic Components, Inc)、SiliconLabs、Nordic Semiconductor、Qualcommなど主要なメーカーは一斉にBluetooth Meshへの対応を表明した。これらの企業名からのリンク先は、いずれも周辺機器用に使われるMCUがBluetooth Meshに対応するという話で、まだコントローラー側(つまりスマートフォン側)は含まれていない。
しかし、こちらは原理的にそんなに難しい話ではない(既にSilvair Appが存在することからもこれは理解できる)から、まずはBluetooth Mesh搭載製品に必要なMCUなどの普及からということである。実のところ、リンク先のリリース文を読んでいただくと分かるが、新製品投入というのは1つもなく、全てSDK(ソフトウェア開発キット)なりソフトウェアスタックなりの更新でBluetooth Meshが使えますという話で、ハードウェア的にはBluetooth 4.0以上に対応したものがそのまま使えるので、これは開発側にとってもうれしい話である。
Bluetooth Mesh搭載製品が市場投入される時期だが、さすがに2017年中は難しいだろうが、2018年以降はぼちぼち出てくることが予測される。これによって、メッシュネットワークを既にサポートしているZigBeeやThread、Z-Waveとの間で勢力図がどのように変化するかが今後の焦点になるだろう。
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