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メッシュネットワークをキーにIoTへ進む「Thread Group」IoT観測所(3)(1/2 ページ)

いわゆる「IoT」は1社だけで完結しないため、各社は業界団体に加入、あるいは組織して対応しようとしている。今回はメッシュネットワークをキーに、白物家電や産業界からの加入者も集まる「Thread Group」を取り上げる。

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 「IoT(Internet of Things)」をうたう業界団体がここ数年で複数現れ、さまざまなプロモーションや標準化を始めている。前回は「Open Interconnect Consortium(OIC)を例に、各社がIoT団体を形成する必要性に関して言及したが、今回は「Thread Group」についてもう少し細かく紹介したいと思う(関連記事:IoT観測所(2)「IoT」団体はなぜ乱立するのか)

メッシュネットワークをベースにするThread Group

 Thread Groupそのものは2014年7月に設立されたばかりの団体で、設立時のメンバー企業はYale SecuritySilicon LabsSamsung ElectronicsNest LabsFreescale SemiconductorBig Ass Fans、そしてARMといった面々になっている。これはかなり面白い組み合わせで、強いて分類すると以下の3つに分けることができる。

半導体業界 Silicon Labs、Freescale Semiconductor、ARM

白物家電業界 Samsung Electronics

産業界 Yale Security、Nest Labs、Big Ass Fans

 Yale Securityは鍵やドアノブのメーカーだが、最近はタッチボタン式のキーレスドアロックなどにも力を入れている。Nest Labsはさまざまな検知器(二酸化炭素センサーや煙感知器・温度計、自宅の内部を自分で確認できる監視カメラなど)を提供するメーカー。そしてBig Ass Fansは天井からぶら下げる方式の扇風機(というかファン)を製造するメーカーである。

 この3社の共通点は何か?というと「メッシュネットワーク」ということになる。このMesh Networkという特徴は、Silicon Labsにも当てはまる。同社はZigBeeベースのワイヤレスデバイスではオランダのGreenPeak Technologiesと並んで大きな影響力を持つベンダーである。つまり、Thread Groupというのは、メッシュネットワークをベースにIoTを構築しよう、という業界団体だと考えればよい。

メッシュネットワークとは

 この先に話を進める前に、メッシュネットワーク説明を簡単にしておこう。Wi-FiやBluetoothなど、あるいは3/3.5/4Gとか昔のPHSとかそうしたものを全て含むWireless RAN(Regional Area Network)は、ほぼ全てがポイント・ツー・ポイントの構成である。この構成では下の図1の様に、全てのエンドノードは直接、ルータとつながる。

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図1 ポイント・ツー・ポイントの概略図

 この方式のメリットはスループットを向上させやすいことで、実際、Wi-Fiの中でもIEEE802.11acという規格は最大で1Gbpsを超え、RANの方でもLTEは規格上100Mbpsを超えている。これは、エンドノードとルータが直接接続しているから可能な芸当である。

 その反面、デメリットとしてはルータとエンドノードは直接通信できる状態にないといけないので、速度を上げるには送信出力を上げる、あるいは高感度なアンテナを搭載するといった必要があり、消費電力はどうしても大きくなることが挙げられる。ここで消費電力を抑えようとすると、Bluetooth Low Energyの様に伝達範囲が半径数mに限られるということになってしまう。

 一方のメッシュネットワークは図2の様に、そのメッシュネットワーク全体を管理するノード(Coordinator)がトップにあり、その下に複数のルータが配され、さらにエンドノードがぶら下がる。こちらのルータは図1のルータと似た機能を持つが、ちょっと違うのは複数のルータが協調しあって通信を行う点だ。

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図2 メッシュネットワークの概略図

 図2では2つのルータがあるが、仮に片方のルータがCoordinatorと通信途絶した場合には、そのルータはもう1つのルータ経由でCoordinatorと通信する仕組みになっている。

 つまりルータをある程度の密度で設けておけば、ルータ同士で網(メッシュ)状に通信経路を確保して通信が維持されるわけで、通信障害などに非常に強いという特性を持つ。また通信速度そのものは低く抑えられている関係もあり、ルータ1つ1つのコストも低減できる。また、エンドノードから見た場合、Coordinatorとの距離が遠くても、ルータさえ近くにあれば通信を維持できる。

 デメリットは、大量のデータ通信には元来向いていないことだ。というのは複数ルータを経由することを考えると、レイテンシは当然大きいし、大量のデータのハンドリングはルータ自身の消費電力増加につながる。またルーティングを繰り返すとエラーが起きる可能性はどんどん上がるから、大量のデータだとまともに通信できなくなる可能性もある。

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