メラノーマなど皮膚腫瘍を深層学習で写真から判別、2020年の実用化目指す:医療機器ニュース
京セラコミュニケーションシステムと筑波大学は、AIを活用した画像認識による皮膚疾患診断サポートシステムの実用化を目指し、共同研究を開始した。3年後の実用化を目指す。
京セラコミュニケーションシステム(KCCS)は2017年7月26日、筑波大学医学医療系皮膚科 教授の藤本学氏と、講師の藤澤康弘氏と共同で、AI(人工知能)を活用した画像認識による皮膚疾患診断サポートシステムの実用化を目指した研究を開始したと発表した。2017年3月〜2018年3月にかけて共同研究を実施し、3年後の実用化を目指す。
共同研究では、ディープラーニングで皮膚病の臨床画像を学習し、メラノーマ(悪性黒色腫)をはじめとする複数の皮膚腫瘍を判別する高精度な画像認識モデルを開発する。さらには皮膚がん以外の皮膚病にも適用範囲を拡大し、臨床画像から皮膚病全般の診断をサポートするシステムを開発する。
同システムの開発により、皮膚科専門医がいない医療過疎地や専用機器がない環境でも、市販のデジタルカメラ/スマートフォンで撮影した画像を使って診断をサポートする簡易型診断サポートシステムの構築が可能になる。
今回の研究でKCCSは、画像認識モデル作成サービス「Labellio」の提供やシステム開発を担当する。筑波大学では、AIの機械学習に用いる教師データとして、同大学付属病院皮膚科で蓄積した2万枚以上の臨床画像データを提供する。また、皮膚疾患診断サポートシステムの精度評価や、医療現場での適応性評価を行う。将来的には、2000以上の皮膚疾患が判別できるシステムを目指し、研究開発を進める。
厚生労働省の「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」では、AIの活用が想定される領域として、皮膚病の画像診断が挙げられている。皮膚病は臨床像から診断することが多く、診断の精度が医師の経験によって左右されることが理由となっている。中でも早期発見が重要な皮膚がんは、1999〜2014年にかけて患者数が約2倍に増加しており、高度な診断支援が行える医師向けの診断サポートシステムの開発が求められていた。
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